幕恋男子部

□睡蓮
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年も明けて間もないある夜。

大久保はある大きな密約の成立に立ち会い、ひとつの山を越えた安堵を胸に帰路についた。


藩邸は大久保の指示通り、彼が帰らなくともいつも通り時間には灯を落とし、なにも変わらない風を装っていた。
普通なら、小松や大久保が出かけている場合門には人が立ち、帰邸を待つが、今日ばかりは怪しまれないよう必要最低限の人数が門の内に待機しているだけだった。



「今、戻った」


大久保は少し疲れた声でそれだけ言うと、自室に向かう。
後ろをついてくる半次郎の気配をかすかに感じながら襖をあけ、部屋に入る。


「大久保さぁ、羽織をお預かりしもんそ」

背後から声をかけられ、頷いてするりと肩から羽織を落とす。
それを受けとった半次郎は衣桁に丁寧に掛けると、ほかに御用はありもはんか、と静かに尋ねた。




「・・・・・そうだな。今宵は大仕事を終えたせいか、些か昂った」


「・・・・・・」



「眠れそうにもにもない。お前に鎮めてもらうとするか」



黙って自分を見つめる半次郎に大久保はくるりと向き直り、首筋から頬にかけて手を滑らせた。
半次郎は身じろぎもせずにじっとしている。


「どうした」


苛立ったように聞く大久保を、半次郎は何の色も浮かべない瞳で見つめると、かすかに頷いて大久保の腰に手をまわした。

「・・・どのように?」

まるで指示を仰ぐように聞く半次郎に、大久保は満足そうに嗤った。好むと好まざるとにかかわらず、この男が拒否できないことは百も承知だ。

「遠慮は、するな。お前の欲をぶつけてみるがいい」

「・・それは」

「早くしろ」

半次郎は返事を返さぬまま、大久保をゆっくりと敷いてあった夜具に寝かせた。大久保の顔にかかる前髪が頬に流れ、隠されていた目が顕になる。煽るような強い眼差しにふいと目をそらし、半次郎は大久保の首筋を強く吸った。


「・・・・・う」


反対の耳朶を指でもてあそび、身を捩る大久保の帯を指で緩める。






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