幕恋hours long

□大さまとわたし・1
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春の香りがどこからともなく漂ううららかな午後。

京都錦小路の薩摩藩邸の庭先では、梅の花が散り始めていた。




「もう!!きらい!!大久保さんなんか大っきらいです!!」



突然響いた声に、その梅を眺めていた半次郎は思わず首をすくめた。


「またでごわすか・・・・」



「紫の上は今日もご機嫌ななめだねえ」


庭の半次郎を見下ろすように縁側に立つ小松帯刀は、ふふ、と微笑を浮かべながら呟いた。


「ほんに・・・・」


困った顔で半次郎は草履を脱ぎ、縁側に上がると、その声の主のいる部屋へと歩き出した。それを追うように、花弁がひらりと彼の背にはりつく。


「今日はいったい、なにに怒っているのだろう。ほんとに深雪さんは面白いひとだ」


半次郎の広い背中を見送りながら、小松は心なしか楽しげに独り言を言った。






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