幕恋hours short
□行水始末記
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「もう、いつも龍馬さんは突然なんです!」
「はは、堪忍じゃ」
笑う龍馬さんの背中を手拭いでごしごしと洗う。汲み置いた桶の水を柄杓で汲んで、さあっとかけると龍馬さんは髪を括る紐を解いて、ぶるぶると頭を振った。
「フフ、龍馬さん、わんちゃんみたい」
「ほうか、じゃあ犬洗いさん、水をかけてくれんかのう」
2人で声を上げて笑っていると、突然後ろで咳払いが聞こえた。
それに続いて。
「わ…わん!!」
「えっ」
わたしと龍馬さんが振り返ると、そこに立っていたのは……。
「武市さん!?」
なんと、褌姿の武市さんと以蔵と慎ちゃんが三人そろって此方を見ている。
「どうしたんですか!?みんなそんな恰好で…」
驚きながら問いかけると、武市さんは少しだけ顔を赤らめながら答えた。
「あまりに暑いので、水浴でも、と思って来たんだが…そこの図々しい犬が調子に乗っているようなのでね」
「な、なんじゃと?それはどういう意味じゃ武市!」
「先生のおっしゃる通りだ、お前、先生を差し置いて何を深雪といちゃいちゃしているんだ、、みっともない」
「俺の方が髪が長いからブルブルしたらもっと楽しいッスよ、姐さん!!」
「中岡…私の方が髪は長い筈だが?」
「あ、そ、そうッスね!!!武市さんどうぞ!!!」
なんだか意味がよくわからないけど、要はみんな暑いから水浴びしたいってことなのかな?
「……あーー。せっかく深雪と楽しくしちょったんじゃがのう」
龍馬さんは心底がっかりしたようにため息を吐いて、皆の方に向き直った。
「ほいじゃ、好きなだけ浴びるがいいがじゃ!!そりゃ!!」
そう言うなり、柄杓に盥の水をざぶりと汲んで、思いっきり三人に向かって水をぶちまけた。