幕恋男子部
□ささくれU
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自室に戻ると、ほろ酔いも手伝ってついらしくもなくどさりと足を投げ出して座る。何とはなしに奴の顔を見るのが煩わしく、わざと不機嫌な顔でそっぽを向く。
半次郎はそんな私を知ってか知らずか、黙って夜具の準備を始めた。
「大久保さぁ、そんなところにいては風邪をひきもそ。布団に這入ってくやい」
「・・・それほど柔ではない。あまり馬鹿にするな」
そう言って、振り向いた私は強い力に抱きすくめられていた。予想外だっただけにあっけなく絡め取られ、首筋に埋められた鼻先にぞくりと肌が粟立つ。
妙に落ち着いたしぐさに、半次郎が何かに苛立っている気配を感じて拒絶しようとした腕を止めた。
「大久保さぁ、おいの代わりが新兵衛に務まるとお思いでごわしたか・・・?」
「・・・・離せ、半次郎」
「答えを頂くまでは、このまま」
この男が頑固なことは百も承知だ。私は大仰にため息をつくと、口を開いた。
「代わりになるとは言っておらん。しかし護衛をつけねばお前は西郷のもとに行けぬだろう」
「・・・・お気遣い、痛み入りもそ」
微かに嗤うような声。
こんな声は、聞いた事がない。
「・・・・そげん、せごさぁが大事ごわすか」
多分、半次郎の眼は笑っていない。抱きすくめられているのでわからないが、そんな気がして一瞬息をのんだ。
なぜ、ここに西郷の名を出すのか。
半次郎の意図するものが読めず、混乱の収拾に気を取られている隙に、あっと思う間もなく足元の布団に転がされていた。
「待て、はんじ・・・」
手首を押さえられ、裾を割られる。まるで手籠めにされる生娘のように、あっさりと私の身体は半次郎に支配されてしまった。
見下ろす半次郎は、なぜかひどく辛そうな顔で私を見ている。