SS

□網膜剥離
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目の前が真っ暗になった。その表現には一切の偽りもたとえも含まれず純粋に目の前が真っ暗になったのだ。人はあまりにも忌まわしい記憶があると脳がその情報自体を抹殺しようとするらしいがその機能を超えた力が眼球に起こったといっても過言ではない。

「帝人君帝人君どうして、どうして俺のことみてくれないの?」

本来なら排泄されるべき個所に狂ったように何度も何度も挿入を繰り返された所為か弛緩しきった其処はただ湿度を帯びた音を立てて臨也さん自身を受け入れた。壊れたように何度も何度もつぶやき続ける人間は飽きることなく今度は聴覚を犯してくる。

臨也さんにまるで拉致られるように連れてこられてから貴方以外の人間を目にしたのなんてテレビの画面上くらいだろうにそれでもまだこの男は足りなかったとでもいうのだろうか。

ああ、なるほど狂っているのか

ここに連れてこられてから静雄さんに会っていない。もちろんほぼこの状態で携帯や電話といった連絡手段を奪われれば彼のもとに行くことなんて不可能なのだが。それでもこの男に捉われた最初はもしかしたら彼がここを見つけてくれないかと、もしかしたらここにたどり着いてくれないかと何度も何度も名前を呼んで啜り泣いた。
そのたびに加えられる狂ったような執着と嫉妬と暴力に今は彼の名前を呼ぶことすらできなくなってしまった。

繰り返される性交と体に掛かる負担がまず目に現れた。視界がにじむ。今まで鮮明だった世界に一枚膜が覆ったようだ。そのおかげでゆがんだように笑う彼の表情が少し遠くなったことだけが救いだった。

焦点が合わなくなった目は彼の苛立ちを募らせるらしい。何度も何度も自分を見ろと要求してくる。全くなんという不条理な人なんだろう。あなたの顔なんかよりもこんな目になってしまったらもう静雄さんをちゃんと見ることが出来ない。ああ、もう彼の顔をしっかりと思いだすこともできないというのに。彼の綺麗な髪もあのごつごつしているけど優しい手もあのサングラスの奥の澄んだ眼ももう見ることができないのだろうか。
そう考えると襲い来る絶望に涙がこぼれた。


「うあっ…ひっ…いっ」


現実逃避を続けてた脳内が一点を擦られたことで大きく跳ねた。何度も何度も行為を行っているがどうしてもなれることが出来ず生理的に快感へ溺れてしまう。臨也さんはそれを知っているかのように重点的に攻めてくる。


「あははっ帝人君やっと見てくれたー」

無意識の内に彼の方を見てしまったのだろうか。ずっと目を合わせないようにしてきたというのに。涙で滲む視界に忌々しい赤い眼球が映る。
ひっ、とあまりの嫌悪にひきつる喉音に引かれるかのようにその双瞳が近づいた。閉じることを忘れた口に熱い湿気を帯びた舌が遠慮く侵入し口内を犯していく。
がつ、と獣染みたように腰を打ちつけられれば抑えきれずに嗚咽が漏れた。


「気持ちいい??帝人君アハハハハ!!」

狂ったように笑う男を殴り飛ばしてやりたい衝動に駆られる。が、振り上げかけた手は空を切った。忌まわしくてたまらない男の眼球に映った自分の姿。
浅ましく口端からは涎を垂らし恍惚とした表情。


ああ、狂ってる狂ってる
狂ってるのは臨也さんだけじゃなかったんだ

ああ、ああああああ゙あ゙ああ

こんな汚い僕が静雄さんの事を考えるなんてそんな汚いことしちゃいけない
こんな自分も臨也さんも全部消えてしまえばいいんだ。

ブツンと何かが切れる小気味の良い音がして目の前が真っ暗になった。
汚いものと汚い世界なんていっそ見えない方が幸せなのだ。





だけどこの男はきっと視覚の次は聴覚を犯していくんのだろう。






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はい、初めての臨帝。
静帝臨の戦争サンドが大好き!で臨也さんの頭がパーンしてるのが好きです。
結局何を書きたかったんだろう(^p^)
尻切れトンボでサーセンです!


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