偽物ヒーロー
□06進化する少女
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5月、今日の天気は晴天。
そんな日の6時間目、2組の授業は体育だった。
先生の指示で生徒達が一斉に並び始める。
「・・・今日はタイム測定みたいやな。」
男女それぞれ2人ずつで作られた計4列を見ながら俺は呟いた。
・・・ってか、今回の話のナレーションて俺なんやな。
「よっしゃ、いっちょリレ選になったるで!!」
「そない意気込まんでも、謙也なら確実になれるやろ。」
張り切る謙也に思わず苦笑する。
リレ選て男女からそれぞれ5人ずつ選ばれるんやで。
謙也より速い奴なんかそうそう居らんやろ。
そんな事を考えながら辺りを見回していると遥の姿が目に入った。
・・・前言撤回、1人居ったわ。
準備体操をしたのにまた屈伸をしている。
・・・アイツもリレ選狙ってるんやろか。
去年も一昨年も選ばれとったからな。
ふと、去年の体育祭を思い出す。
体育祭最後の種目、クラス対抗リレー。
アイツはアンカーで、最後に顔面から転んでゴールした。
ゴールテープをしてた奴に足を引っ掛けられたのが原因らしいが、結果は1位だったので本人は気にしていないらしい。
泥だらけの笑顔でVサインをしていたのを今でも覚えている。
・・・体育祭、もうそんな時期なんやな。
「・・・。」
「白石、次自分の番やで。」
謙也に肩を叩かれ、我に返る。
「えっ・・・あ、スマン。」
直ぐ様スタートラインに着き、先生の合図で走り始めた。
「・・・っ。」
「白石君、6秒41。」
「おおきに。」
測定してくれた子にお礼を言う。
6秒41か。
微妙な所やな。
「白石、何秒やった?」
列に戻ると、謙也が話し掛けてきた。
目がキラキラしとるっちゅー事は、自己ベスト更新したんやな。
「・・・6秒41。」
「おっ、良えやん。白石もリレ選になれるんやないか?」
「何言うとんねん。男子で6秒中間とか、滅茶苦茶微妙やんか。」
「白石白石、遥が走っとるで。」
「人の話聞けや・・・って、え?」