偽物ヒーロー
□10LOVEとlikeの違い
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「神崎さーんっ。」
「・・・十神さん帰って来たみたいやな。」
「せやな・・・ちょっくらこれ渡して来るわ。」
白石から貰った葡萄味の缶ジュースを握って立ち上がると、こっちに向かって走ってきているさやかの元へと急いで走って行った。
「さやか、これ白石から差し入れや。」
「・・・白石君が?」
「おん。」
「・・・。」
微笑みながら、私から受け取ったジュースを両手で握り締めるさやか。
どないしたんやろう?
「・・・さやか?」
「え・・・あ、すっすみませんっ。最後に一本走りましょうかっ!!」
そう言って私の右足と自分の左足を紐で括るさやか。
「・・・せやな。」
あからさま動揺しとるな・・・ホンマどないしたんやろう?
・・・その後その場でさやかと一本だけ走り、制服に着替えるため2人揃って一旦教室に戻った。
・・・。
「それにしても、ウチ等ホンマに少しづつやけどタイム上がってきとるな。」
このまま練習しとれば確実に1位取れるわ。
残念やったな、白石。
賭けはウチの勝ちで決まりみたいやで。
「・・・。」
「・・・さやか?」
着替えも終わり、さっきから無言なままのさやかの方を振り向くと、さやかももう着替え終わっていた。
先程渡した葡萄ジュースを両手で握り締め、窓の外を見てぼぅっとしていた。
「さやか、さっきからずっとぼぅっとしとるで?何かあったんか?」
「・・・神崎さん、白石君外で待ってますけど急がなくて良いんですか?」
私の方を見向きもせず、問いにも答えず、さやかはただ窓から外を眺めていた。
「・・・白石?あぁ・・・アイツは昔からウチが何も言わへんでもウチの事待っとってくれんねん。」
あんまり遅いとたまに怒られるんやけどな、と苦笑いしながら言っても、さやかは外を見つめているだけだった。
「ん・・・でも、あんま待たせんのも悪いしな。そろそろ行こか。」
そう言って荷物を持ってドアを開けようとしたその瞬間、後ろから呼び掛ける声が聞こえた。