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□道連れ。
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「ねぇねぇ曽良君?」「何ですか芭蕉さん。」
珍しく何のフザケもなく芭蕉が曽良を呼んだ。
何処となく沈んだ雰囲気の芭蕉に、少し気掛かりだったが。
「私の、何処が好き?」
「は。」
目の前のいい年こいたオッサンもとい芭蕉が。
両手を合わせて祈る様なポーズで潤んだ瞳を向けてくる。
曽良は惚れた欲目か、陶酔と頭痛に一瞬で悩まされる事となった。
「どこが…ですか?」「ん!何で好きになったの?」
「それは…。」
出来ればこの手の話は言葉にしてしまいたくは無いのだが。
曽良は戸惑った。
ここで無下にすると、このジジィは何処までも何時までも絡み、終いには泣くのだ。
「…………芭蕉さん、だからですよ。」
「え〜…。分かんないよぅそれじゃー…。」
ブチブチ食い下がる乙女なオッサンを前に、既にその反応自体が可愛らしいと言える訳も無く。
「……弱りましたね……。」
「なッ!?困んないでよ!!?大事な事なんだからねっ?もぅ!」
モジモジとよく分からない動きで暴れる芭蕉を尻目に、曽良は先に歩いて行った。
「あっ!!曽良君ちょっとぉっ?!置いてかないでーっ!!」
バタクタと後ろから芭蕉が追いかけてくる。