BOOK
□エイプリルフール
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首の縄を弛めもせずに問う曽良に、芭蕉は笑顔を返した。
「うん…。大好き。君に関しては、私、馬鹿でもいいの。」
そう思えちゃうの。と、芭蕉は笑う。
それは些か自傷気味で、しかし本心からの言葉で。
曽良はじっとり睨む様に芭蕉を見てから。
するりと縄を外した。
「芭蕉さん。今日は4月1日です。」
「??そうだよ?」
「エイプリルフールと言って、嘘を付いても許される日だそうです。」
「………………は?」
茫然と、何処か上機嫌の曽良の背中を見送る。
当の本人は勝手に茶の用意をし始めた。
「そこまで僕の事を想っていたんですか、芭蕉さん。…驚きました。」
「いや……曽良君?」「これからは何時でも殺せますね。特に…腐った句を詠んだ時などは。」
「ヒッ!!!殺される!!近日中に確実にッ!!!」
「良い句を詠めば死なずに済みますよ。」
「…眼が本気だよこの弟子男……。」
恐怖に震える師を背にして、曽良はさっさと茶を啜る。
庭を眺めながら寛ぎ始めた曽良を見ながら、芭蕉は首を擦りつつも座る。
「ああ。そういえば、羊羹頂きました。お裾分けです。」
「わぁ〜!玉羊羹じゃない!!ありがと曽良君っ!」