BOOK

□エイプリルフール
2ページ/3ページ

首の縄を弛めもせずに問う曽良に、芭蕉は笑顔を返した。


「うん…。大好き。君に関しては、私、馬鹿でもいいの。」
そう思えちゃうの。と、芭蕉は笑う。


それは些か自傷気味で、しかし本心からの言葉で。


曽良はじっとり睨む様に芭蕉を見てから。


するりと縄を外した。

「芭蕉さん。今日は4月1日です。」
「??そうだよ?」
「エイプリルフールと言って、嘘を付いても許される日だそうです。」


「………………は?」

茫然と、何処か上機嫌の曽良の背中を見送る。
当の本人は勝手に茶の用意をし始めた。


「そこまで僕の事を想っていたんですか、芭蕉さん。…驚きました。」
「いや……曽良君?」「これからは何時でも殺せますね。特に…腐った句を詠んだ時などは。」
「ヒッ!!!殺される!!近日中に確実にッ!!!」
「良い句を詠めば死なずに済みますよ。」
「…眼が本気だよこの弟子男……。」


恐怖に震える師を背にして、曽良はさっさと茶を啜る。
庭を眺めながら寛ぎ始めた曽良を見ながら、芭蕉は首を擦りつつも座る。


「ああ。そういえば、羊羹頂きました。お裾分けです。」
「わぁ〜!玉羊羹じゃない!!ありがと曽良君っ!」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ