BOOK
□衝突
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ウワアァアアアッッ!!!と、本格的に泣き叫び始めた。
何とか誤解を解こうと、芭蕉の躰を引き寄せようとするが。
思い切り拒絶されてしまった。
普段ならば断罪だのとふざけられるのだが。今は、そんな事をしたら完全に終わってしまうだろう。
大体の話の節が分かった曽良は。
少し離れて立っていた芭蕉を脚払いで崩し、倒れさせた。
その上に跨り、己の腰帯を素早く解き腕を拘束する。
少し、恐怖に怯えた芭蕉だが、それと同時に怒りも燃え上がったのか。
怒り出した。
暴れられては面倒と、腰の位置を芭蕉の太腿にずらして脚をロックする。
芭蕉の、鋭い睨みが飛ぶ。
「………放してよ。」「嫌ですけど。というか、いい加減僕の話も聞いて下さい。」
「ッ!!話なんて…。」
「…良いですか。貴方が女の匂いと言った、この香り。これは椿の香りです。」
「…………は?」
「さっき、僕が団子を買いに行った時、椿が沢山咲いた鉢を持った人にぶつかられたんですよ。」
「………………。」
未だ信じられない、という顔の芭蕉に、溜息を付く。
何か無いかと己を見ると、肩元に椿の黄色い花粉が付いていた。
「ほら、花粉まで付いてます。」