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□空が碧くて。
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「何だか、今まで随分と遠回りをして生きてきた気がします。」
「そう?」
「ええ。」

芭蕉の胸板に顔を埋めて、深く、深く。
呼吸をする。

「貴方に恋焦がれ続けて…気が狂いそうな程に想い続けて…。本当に。でも、言って、…良かった。」


肺胞に芭蕉の匂いを染み込ませる様に。
深く呼吸を繰り返す。
いつ、この瞬間が終わっても良い様に。
この腕の中から彼が消えた時に

彼を感じ取れる様に。

もう何処にも行かせはしない。



いつの間にか芭蕉の背中に回した腕に力が入っていたのだろう。

強く締め付けてしまった。
芭蕉が眉を顰める。
「曽良君…痛い。」
「え。あ、…はい。」痛いですか。と、更に力を込めてギリギリと芭蕉を締め上げる。
「ぃタタタダダダダダダァッッッ!!!!ッ!曽良君曽良君そ…いや曽良様アァアアア!!!!!」
「全く…芭蕉さんの癖に生意気です。」

パッと躰を開放したせいで、バランスを崩して芭蕉が落ちた。

「いっだぁ…もぅっ!!曽良君のバカッ!アホ!!マヌケ!!!」ワタワタと手足をばたつかせて抗議する芭蕉。

「はぁ…バカジジイが…。」
「泣きながら言われても怖くなんかないやいっ!!」
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