BOOK
□二人一緒に。
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曽良はずっと考えている。
『どうしたらこの人は僕のものになるのだろうか…。』
長年一緒に居ると、尚更言い出しにくいもので。
ともすれば、芭蕉は男同士の恋愛に、賛成かどうかも分からない。
想いを告げた後で、もし、断られたら。
その時が、二人の別れになるやも知れぬのだ。
曽良が眉間に皺を寄せて黙り込んでいるのを、師である芭蕉はずっと見てきた。
しかし、ここ最近の曽良の態度は、少し、おかしかった。
『何か…悩みでもあるのかなぁ?』
ふと自分の行いを振り返るが、今に始めた事でもなく。
昼食の握り飯を持ったまま、宙をぼーっと見ている弟子を、ただただ芭蕉は見ていた。
『いつもなら、こんなにじーっと見れば直ぐに断罪チョップ出すのになぁ。』
まるで恋でもしている様だと思い、一人微笑む芭蕉を。
やっと自分の世界から戻ってきた曽良が見つけ、突っ込む。
『何、人の顔見て笑ってるんですか、芭蕉さん。』
コテンパンにしますよ!と言いつつチョップをかまそうとする弟子に怯えつつも。
芭蕉は珍しく対抗する。
「ヒドッ!!何この弟子〜!!師匠に対して酷過ぎるよ!」
プンプン怒りながら叫ぶ。