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□エイプリルフール
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芭蕉庵の居間で、庭を見ながらお茶を飲んでいると。


弟子の曽良が突拍子も無くスッと入って来た。


「………どしたの?」「あぁ、芭蕉さん。
いきなりですが、死んで下さい。」 
「どうしてッ!!!?」


縄を両の手にしっかりと持ち、ビンッ!!と音を立て張るこの男。

芭蕉には正しく死神にしか見えなかった。


「どうもこうも…僕は貴方が嫌いです。心底。ですから、いっそ殺してやろうと考えたんですよ。」


「な……ッ!!タンマッ!!何その物騒な台詞……。」


怯えながらも、ジリジリと庭に逃げようと隙を伺うが。
曽良相手に願いがかなう事無く。
呆気なく腕が届く範囲まで詰められた。


そのまま首に、縄をかけられ締め上げられた。


「グゥ………そ…ら…君……。なん…で?」「……嫌いですから。」

口角を上げ、薄く微笑まれると。
惚れた欲目か、『あぁ。やっぱり格好いいなぁ』と思ってしまう。首を締める男なのに、だ。


芭蕉は涙が零れてはいるのに、相反して心は静かだった。


「ねぇ。私は…曽良君好き。大好きなの。例え殺されても、…本望なんだよ、曽良君。…………愛してる…。」

「……僕が、嫌いと言っているのに?」
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