みじかい

□支配者の舌
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もうどれだけこうしているだろう。椿はぼんやりと考えた。
ゆっくりと角度を変えると、咲耶の白く艶かしい喉がひくりと鳴った。また、涙が零れただろうか。

「……ふ、っん、!」
「…っは、……」
「…、……っ!」

少しでも足元を動かせば、ガサガサと紙の擦れる音がする。
咲耶がさっき落とした書類の束だろう、会長辺りにでも提出するつもりだったんだろうか。
生徒会室のドアの脇で壁に押し付けられたまま、長々とキスされるのはどんな気分なんだろう。少なくとも良い気分ではあるまい。

「………っゃ、!!」
「っ……」

唐突に解放してやれば、殆ど力など入らないだろう腕に押され、そのまま後ろによろけた。
頭が霞み掛かっている、酸欠の所為だろうか。
ぼうっとしたまま見下ろせば、咲耶も違わぬようで。
ぼろぼろと涙を零しながら呆然と椿を見上げている。

嗤う形に椿の唇が歪むのを、咲耶の目は捉えた。

「……つ、ばき、先輩……」
「…なんだ?」
「………」

涙で濡れそぼつ睫毛を震わせ、咲耶は一言、椿の名を呼んだ。
それが何の為なのか、確認か、懇願か、それは椿にも咲耶自身にも分からなかった。

「……咲耶、どうだ?」
「………」
「覚えたか?…ボクの舌を」

わざと、意識して椿は唇を舐めた。ちらりと覗く舌に、咲耶がまた畏怖する事を計算して。
それは完全なる計算、ミスなどはなく、咲耶は椿の思い通り綺麗なまま毒々しい快楽に怯えた。
そうする事で、咲耶はまた泥沼に足を沈めるのに気付かずに。
ゆっくりと両腕の中に閉じ込めて、脳に直接刻むような甘い声音で囁く。

「いいか咲耶…これがボクの、」
「…!、っぅ、ふ……!」

最後の弱々しい抵抗を無視して進む椿の舌、奥に引っ込む小さな咲耶のそれと絡まり、また離れた。
金色に煌めく瞳に、囚われて。




「…これが貴様を支配する者の舌だ、咲耶」







支配者の舌


(支配者は、ボク)
(貴様は支配される者)

(さあ、ボクに服従を誓え)










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ドSな椿先輩。を書きたくてやった、反省はしていない。

…性格捏造しまくりですみませんすみません!

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