みじかい

□足音
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眠い。
俺は畳の上、寝転がりながらそれだけを頭に浮かべていた。
俺は基本的にいつも眠いが、今日は特別眠い気がする。
なぜだろう。昼飯食い過ぎたかな。
ごろごろしながらそんな無駄な事を頭に巡らせるのが、この俺の日課だ。

眠い眠いと声に出すと、ヒメコやスイッチになら寝れば、と言われるから口にはしない。
まあその通りで眠いなら寝ればいいんだけど、それはできない。
超暇そうに見えて実は暇じゃないんだ、これが。


「…今日は来ないんやろか」


ヒメコがぽつりと呟いた。
スイッチがそれに同調する。


「『そうかも知れないな。もう帰ったのかも知れない』」

「つまらんなあ…」


はあ、と溜め息が聞こえた。
ヒメコが持っていたカップを置くカチャンという音も。
スイッチはまた無言でパソコンのゲームをやり始めた。
時計の音がカチカチとうるさい。


「なあ、やっぱ今日もう来ないんちゃう?何かして暇潰そ、な?ボッスン」

「………」

「また寝ちゃったん?…ホントつまらんわ」

「『所謂ふて寝ではないのか。なかなか来ないから』」

「そうかも知れへんなあ!ボッスンてばホントメンタル弱いんやから」


ヒメコとスイッチが好き勝手言っている。
俺は寝てないぞ、ただ黙ってるだけだ。
でもマジで遅いな、昨日、明日も来るよって言ったのに。


そう。俺は人を待っている。
毎日毎日眠たいのを我慢して、この部室でヒメコとスイッチと。
待っているのは、誰かって?
咲耶だよ。俺の幼なじみ。
最近転校してきたんだ。
で、ちょくちょく遊びに来るんだ、ここに。

正式な部員じゃないけど、俺は勿論ヒメコもスイッチも咲耶を歓迎してる。
だからずっと待ってる。
早く来ないかな。


「…スイッチ、咲耶来たら、今日は何するんやったっけ」

「『ボッスン塔再建築の予定だ』」

「ああ、この前また椿に壊されたやつな」

「『そうだ、ボッスンが泣いて悔しがったあれだ』」

「咲耶器用やから、今度はもっと高くいくんちゃう?」

「『その可能性は十分にあるな』」

「そしたらなんかもう、ボッスン塔やなくて咲耶塔やん!」

「『それは素晴らしいネーミングだ、よし、これからはボッスン塔ではなく咲耶塔と呼ぶ事にしよう』」


また好き勝手言っているようだ。
何だよ、もう来ないんじゃないか、なんて言ってたくせに。
つまりはあれなんだな、お前ら咲耶が大好きなんだな。俺もだけど。


ああ早く来ないかなあ、早くあの小さい手がドアを開けないかなあ、

早く早く、パタパタ廊下を走って来い、




「………あ、」






きみの足音
やっと聞こえた!


(ゆ、佑ちゃん、遅れてごめんね、!)

(…っおせーぞ咲耶!)

(待ってたんよ咲耶ー!さ、はよ入り)

(『今日はもう来ないのかと…待っていたぞ、ボッスンは特に』)

(ぎゃああぁあ言うなスイッチイィイ)

(…?変な佑ちゃん)








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取り敢えず咲耶様が好きで堪らないスケット団、て事で。

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