Boy


□ONE DREAM!
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シャッターを切るたびに浴びせられる光の矢。真っ赤な絨毯が敷かれた迎賓館への道を、しっかりとした足取りで袴の裾を微かに床に擦りながら進む少年がいた。紋付の羽織の袖が歩くたびに揺れる。
彼の姿をシャッターに収める者、着飾った女性たちが周りにいた者たちが口々に彼のことを噂する。
「あれが国技家元師範ガープ氏の御嫡孫ルフィ様……!」
「凛々しいお姿ね、確か来年で高校生になられるとか……」
「この前の国技大会では中学男子の部で優勝なされたそうだ」
「確か名門校、グランド学院男子中等部にも通われているんだったな」
「まあ、将来有望ですこと……」
……しかし数か月後、この少年が世間をさらに騒がせることになるとはこのとき誰も予想していなかった。

「やべぇ、遅刻だ、遅刻!」
小柄な体を学生服に包んで、鞄を手にして急ブレーキをかけて食堂にやってきた人物に食堂にいた何人かの男たちはカラカラと笑った。
「おう、おはようルフィ!」
「昨夜のパーティはどうだった?」
テーブルに着いた彼に、男がよそったご飯とみそ汁を目の前においてやった。彼、ルフィはありがとう、と礼を述べると、箸を手にした。
「いただきまーす! ……あー、昨日? じいちゃんといったやつか?」
「そうそう。御馳走とか出たんだろ? 楽しかったか?」
ルフィはうーん、とご飯を頬張りながら目を隅に寄せて考えた後、卵焼きを箸にさして答えた。
「いや、別に。御馳走は美味しかったけど、おれはじいちゃんの傍に居ただけだし。じいちゃんはいろいろ話してたけど、難しい話ばっかりだった。っと! いけね、もう行かなきゃ! ごちそうさまっ」
ルフィはあわただしく席を立つと、鞄を手にした。すると、扉の向こうから肥えた女性がルフィを呼んだ。
「こら、ルフィ! 早くこっちへきな! しょうがない、アタシが送って行ってやるよ」
「しかたねぇ、車出してやるか」
テーブルについていた男のうち一人がそう言い、席を立とうとしたがルフィは彼らの脇をすり抜けて行ってしまった。
「え、めんどくせー、ダッシュでいけば間に合うし、一人で行けるよ!」
「あ、こら、ルフィ!」
「でもありがとな、ダダン、みんな! いってきまーす!」
そういって笑顔で玄関から敷石の敷かれた庭を渡って門へ向かって走っていくルフィを見て、その場にいた者たちは顔に笑顔を浮かべながらため息をついた。唯一、ダダンと呼ばれた肥えた女性が走っていくルフィの後ろ姿を見て眉をひそめた。
「アタシは信じられないよ。いくら掟だといえ、あの子がかわいそうだ……」
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