ブック 短編

□教卓真ん前絶好ポジション
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「マジかよー!」

俺の前に座っていたグリーン、は手元の紙と黒板に書いてある番号とを見比べてそう叫んだ。

「よりによってなんで一番前の真ん中なんだよ!」

どうやら席替えの結果がお気に召さなかったらしい。
ひとしきり文句を言った後、椅子を跨いで真後ろの俺の方向いてこう言った。

「なぁレッド、席かわんねぇ?…って駄目だよな」

「いや、いいよ」

「へ?…マジで?」

俺の答えが相当意外だったらしく、グリーンはポカンとした顔で聞き返してきた。

「え、だって、一番前の真ん前だぞ?教卓の真ん前だぞ?本当にいいのか?」

「うん」

「なんだよ、苦手な奴の近くの席にでもなったのか?」

「別にそういう訳じゃない」

言って、俺のひいたクジをグリーンに渡しだ。ちなみに席は前寄り壁際だった。
未だ首を傾げるグリーンに「俺を見てればそのうち解るよ」とだけ言って、俺は席を移動させ始めた。



話は少し変わるが、うちの学校は昔と比べて生徒数が多くなっているらしい。
なので、教室の中はけっこうギュウギュウで壁際の席は机を壁際にくっつけていたり先頭の列はギリギリまで机を前に出しており、一番前の真ん中であるこの席は教卓にくっつくような形になっている。

要するに、この位置は先生に一番近い席でありながら先生からは教卓の影で死角になっているのだ。
つまり、居眠りするには絶好のポジション。
ついでに言えば教壇は一段高いところにあるので、実は後ろの方の席の方がよく見える。
授業中八割は寝ている俺にとってここはある意味最高の席だった。

「まぁ、グリーンを後ろから観察できなくなったのはちょっと残念かな」

そう小さく呟くと、俺は欠伸を一つしてから堂々と机に伏した。



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