ブック 短編

□君への想いは
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ふと、ここ二・三日顔をないなと考えたら、そういえばこの前あそこで会ったよなと思い出して。
実際いってみたら本当に本人がそこにいたので、なんとなく嬉しくなって声をかけた…のだが。

「…人の邪魔してんじゃねぇよ」

シルバーがそう言って睨むので仕方なく一旦離れたものの、なんとなく、そのままここを出る気にもなれなくて俺はその辺に腰を下ろした。
それが今よりちょっと前の話。

「なんだよー、せっかく会いたいから会いに来たのに…」

シルバーが最初の一言を放って以降こちらを見ようともしないのがつまらなくて、思わずそう愚痴を溢す。
すると、不意にシルバーがこちらを振り返りこう言った。

「…お前は俺をどう思ってるんだ」

「へ?」

何故急にこんなことを訊くんだろうとは思ったが、訊かれたので改めて考えてみる。
俺にとってシルバーはどういう存在なんだろう。

ライバルとか友達とか、当てはめられる言葉はいくつかあるのだけど、何故かどれも何かが違う気がしてしまう。
間違ってはない、でもなにか足りないような、そんな感じ。

「…逆に訊くけど、シルバーは俺のことどう思ってる?」

考えても解らなかったので、シルバーはどう思ってるのだろうと訊いてみた。

「俺がお前をどう思っているか…か」

そう言うと、シルバーはこっちに向かって歩み寄ってきた。
そして俺のすぐ目の前まで来て立ち止まる。

今までにない程近くでシルバーと俺は向かい合った。
至近距離で正面から真っ直ぐ見つめられ、不覚にもその紅い瞳から目が反らせなくなる。

肩に手を置かれ、更に縮む距離。
一瞬だけ、唇に触れた熱。

「…これが答えだ」

そう言うと、シルバーは踵を返して歩き出す。
去っていくその姿が見えなくなっても、俺はしばらくその場で固まっていた。

「…チューされた?」

そう口に出した瞬間、ボッと顔が熱くなり、心臓が暴れだす。

「ちょ、お、落ち着け俺!相手は男だぞ!?しかも最近少しはマシにはなってきたけど性格の悪いあのシルバーだぞ!?」

声にだして言ってはたと気付く。
そう、いくらその辺の女の子よりよっぽど綺麗な顔をしているといってもシルバーは男だ。
そんでもって俺も男で、つまりさっきのは男同士のキスで、俺の常識からすればそれは普通じゃない。

しかも、ファーストキスだったりする。

「…シルバーの唇、男なのに案外柔らかかったな」

ふとそう呟き、その感触と初めて至近距離で見たあの紅い瞳をを思い出す。
無意識に、指が唇にそっと触れる。

「っ…いや待て!違うだろ!」

そうだ、ここは普通「あんな奴にファーストキスを奪われるなんて」とかショックを受けたり怒ったりすべきところだろう。
何を余韻に浸っているのだ俺は。

…でも。

「嫌じゃ、なかった…」

どころか、下手をすると嬉しかったかもしれない。
実際、先程のことを思い出して自分の口元がほんの少し緩んでいるのが解る。

気付いてしまったからには、認めざるをえない感情。

俺はシルバーに恋してる。



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