伝えたかったこの想い

□俺にはその資格がない
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その後ろ姿を見た時、もしやと思った。
しかし、どうせまた人違いなのだろうとも。

「…グリーン?」

「………レッ、ド?」

だから、目の前の人物が振り返って俺の名前を呼んだ時、こちらも相手の名前を口にしはしたものの、一瞬頭の中が真っ白になった。

これは夢なんじゃないか、それか、アイツの事を考え過ぎて幻覚をみているんじゃないか。

そんな思考が真っ白になった頭の中を通り過ぎる。
しかし、今目の前にいるレッドは俺の意識が産み出した幻覚にしては薄汚れていたし、夜の暗闇と帽子のせいで顔はあまりよく見えなかったが記憶の中のレッドより若干成長しているように見えた。

「お前、本物…だよな?」

俺がやっとの思いでそれだけ言うと、レッドキョトンとした表情でこう言った。

「うん」

瞬間、思わずレッドに詰め寄り両肩を掴み叫んだ。

「レッドお前!今まで何処行ってたんだよ!一切連絡も寄越さねぇで!俺がどんだけ…っ!」

そこまで言ったとこではっと我に返る。
俺がどんだけ…何だっていうんだ。

探したか?

心配したか?

会いたかったか?

寂しかったか?

お前のことばかり考えていたか?

…言ってどうする。

それに、俺にはそんなことを言う資格はないのだ。
レッドに勝てなかった俺には。
レッドを見つけられなかった俺には。

冷静になった頭でそこまで考え、俺は無理矢理口の端を吊り上げて以前アイツの前でよく浮かべていたような笑いを顔に貼り付けてこう言った。

「…ったく、全然姿見ねぇから死んだかと思ってたぜ?あと、皆お前のこと心配してた」

肩から手を離し、レッドから一歩離れる。

「まぁ、俺はともかく、家族にくらい何か言ってから行けよな!お前んとこのおばさん、心配してたぜ?」

そう言って、レッドの頭にポンと手を乗せる。
レッドのかぶっていた帽子が少しずり落ちてレッドの視界を塞いだ。
レッドはそれを直そうとしたが、俺は手に力を込めてそれを阻んだ。

今の自分の顔を見られたくない。
多分、今にも泣きそうな最高に酷い顔をしているから。
実際、さっきの台詞を言う際に声が震えなかったのは最後の意地だった。

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