伝えたかったこの想い
□俺の手では届かない
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なんとなくだった。
「アイツに会える気がした」とか、そんなロマンチックなもんじゃなく、ただ「近いんだしたまにはマサラまで歩いて帰るか」なんて気まぐれに考えただけ。
まぁ、いつだって会いたいとは考えていたのだけど。
あれだけ探しても駄目だったのに、あんなにあっさり会えるだなんて欠片も思っていなかった。
ジョウトから来たゴールドとかいう少年に負けて以来、俺はレッドを探すことは止め、ちゃんとジムにいて仕事をするようになっていた。
といっても、挑戦者はほとんど来なかったので仕事といえば少しの事務とジムのトレーナーたちにバトルについての指導をすることぐらいだったのだが。
何故、レッドを探すのを止めたのか。
それは、悟ったからだ。
アイツを連れ戻すのは自分ではないのだと。
レッドによく似た目をした少年と戦い、負け、そして思った。
コイツは、レッドの元に辿り着くのだろうと。
根拠も理由もない。
ただ、俺の直感がそう告げた。
彼に、シロガネ山に行くよう言った理由。
本当は薄々解っていたのだ。レッドがそこにいることを。
そして、それと同時に理解していた。
レッドを連れ戻すには、場所ではなくトレーナーとしての到達点としてレッドの元に辿り着ける人間でなければいけないこと。
加えて、自分は未だその場所へは届かないことを。
だから、俺はレッドを探すのを止めた。
しかし、ジムで仕事をしながらも心の中では相変わらずレッドのことばかり考えていた。
そんな、矢先。
レッドは、数年ぶりに俺の前に姿を表した。