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□二人乗り
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突然だが、うちの学校では自宅から学校まで2km以上離れていなければ自転車通学は許可されない。
しかし、部活生は帰りが遅くなることもあるだろうということで例外として1.5km以上で自転車通学の許可がおりる。

で、うちから学校までの距離はギリギリ1.5km以上。
部活生である俺きちんと学校から許可をもらって自転車で通学している。
対して、隣に住んでるレッド。
学校がの距離は当然俺とほとんど変わらないが、こいつは帰宅部である。
よって、徒歩通学。…本来なら。

「お前、なんで徒歩なのにいつも家出るのが俺と大体一緒なんだよ!」

俺はいつものようにレッドに対して怒鳴った。
先にいっとくが、俺は余裕を持って早めに家を出たりなんてしてない。
つまり徒歩のレッドなら完全に遅刻の時間。

「…起きれないから」

自転車の荷台に座ったレッドが答える。
勿論、自転車を漕いでるのは俺。
ようするに二人乗りだ。

「俺がこうやって乗せてやんなかったらお前毎朝遅刻じゃねぇか!」

「グリーン、いつもそう言うけど乗せてくれなかったことないじゃん」

「やっぱりわざとがこの野郎!」

いや、解ってたけど。
でもやっぱり腹は立つ。

「嫌ならそのまま先に行けばいいのに」

そう言いつつもレッドには解っているはずだ。
俺にはそんなことは出来ないということを。

「そしたら困るのはお前の癖に、なんで偉そうに言うんだよ」

「え、わざわざ言ってほしいの?」

「…お前、普段喋らないくせにこういう時ばっかり口が回るよな」

ため息をついて、自転車を漕ぐことに専念する。
スピードがあがり、腰にまわるレッドの腕に少し力がこもる。

別に、嫌な訳ではないのだ。
好きな奴と毎朝自転車で二人乗り。
必然的に触れ合う体。
それが嬉しくないといえば嘘になる。
ただ、どうもレッドの手の上で転がされているようで面白くないのだ。

「…グリーン今日、部活は」

「あー…今日は自主練の日だかんな。メニューさっさと終わらせれば5時過ぎには帰れるかな」

「じゃ、さっさと終わらせてよ。待ってるから」

「はいはい」

レッドはいつも俺の部活が終わるのを教室で待っている。
ただし、一緒に帰りたいとかそういう可愛らしい理由ではなく、帰りも俺の自転車の荷台に乗るため。
曰く、「行きに乗せるのも往復乗せるのもたいして変わらないだろ」だそうで。

それでも、予定より遅くなっても帰らず待ってくれてるあたり少しくらいは俺と一緒に帰りたいという思いもあるのかもしれない。
というか、そうとでも思わなければやってられない。

などと取り留めのないことを考えつつ。
背中にレッドの体温を感じながら、俺は目の前に迫る学校前の上り坂に挑むべく自転車を漕ぐ足に気合いを入れるのだった。



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