ブック フリー・捧げ物

□気付いてる
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バレンタインに、机の上に山積みのチョコレート。

漫画なんかではよくあることのようだが、実際はそれなりにモテる奴でもせいぜい5、6個くらいでそんなに貰う奴なんて少なくともこの学校にはいない。
…目の前の幼なじみを除いて。

「いゃあ、今年も大分もらっちゃったな!」

放課後の教室、自慢気にそう言うグリーン。
…イラッとする。

「それ、鞄に入りきるの?」

「無理だな!去年も大体こんくらいあったけど入んなかったし!」

グリーンは、一緒にいるといつもうるさいし自意識過剰で鬱陶しいのだが残念ながら顔はいい。
ついでに馬鹿のくせに勉強は出来るし運動も俺ほどじゃないけど大分できる。
よって、実態を知らない女子達にやたらとモテる
だから、バレンタインに机に山積みにするほどチョコを貰うのは毎年恒例のことだ。

「…袋あるけど、使う?」

「おう!ありがとな、レッド!」

ちなみに、このやり取りもほぼ毎年恒例だったりする。

「別に。グリーンが持ち切れなかったら手伝わされるの俺だし」

そう言いながらグリーンの机の上に山積みのチョコを取り出した袋に流し込もうとしたその時、グリーンに袋を持つ腕を掴まれた。

「…何?」

「いや、袋に入れるくらい自分でするって」

グリーンの珍しく厭味でなくにこやかな顔に、嫌な予感がした。

「いい。俺がやる」

「へぇ?珍しいな、お前が俺のために動くなんて」

「…気まぐれ」

「だったら別に俺が自分でしたっていいだろ」

そう言ってグリーンが俺の手から袋を取ろうとする。

「あっ…」

反射的に俺は手に力を入れてそれを防いだ。
結果、袋をグリーンに取られることはなかったのだが、俺の不自然な態度何かあるとグリーンは確信してしまっただろう。

「何だよ、チョコを入れる前に俺にそれを触られると悪い理由でもあんのか?」

言いながらニヤニヤと笑うグリーン。
まさか…グリーンはもうあのことに気付いている?
そんなはずはないと思いたいが、先程からのグリーンの言動がそれを否定している。

そして、グリーンの口が再び開き俺にとどめの一言を放った。

「例えばその中にすでにチョコが入ってるとか。勿論、お前から俺への」

「っ!?」
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