とある

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柳瀬柚木。28歳。
教師となって早E年。三十路手前自分は、未だに独身である。

独身なのは、断じてモテない、とか悲しい理由ではなく…
問題は、自分の性癖にあった。



「おう、柳瀬先生。今日も良いケツしてんなあ。」

「いい加減、セクハラで訴えますよ、黒田先生…」

「あー、また黒田先生、柳瀬先生のお尻触ってる!」

「ほんとだ、キモーい!」

「黙れ女子高生共!」

「いやいや、女子高生に喧嘩売ってどーすんですか。」



俺のお尻を揉むのは、管理作業員の黒田官兵衛。
同じ大学の先輩で、大学時代から、よく俺の尻を触っては、女子に気持ち悪がられている男である。

白昼堂々、廊下のド真ん中でお尻を揉まれる。
これももう日常となりかけているのだから…俺ももう、大分毒されたものだ。



「あ…」



ふと、一人の生徒の姿が目に入る。

そいつは、綺麗な銀色の髪で、俺は一目見たときからあいつに惹かれていた。
綺麗な顔立ち、すらりとした身長、良い声。
これが俗に言う、一目惚れというやつなのだろう。



「何だ何だ、あんなひょろいのの何処がいいんだ?お前さん。」

「そーだね。黒田先生には無いもの全てを持ってるところかな。」



未だにお尻を揉み続ける手の甲を抓りあげ、俺は体制を立て直す。



「じゃ、俺次、授業あるんで。」

「ああ、おい、柚木!」



黒田先生の声に振りかえる。



「お前さん、あの餓鬼に飽きたら、小生のとこに来いよ。」

「考えとく。」



先程見かけた生徒のいる教室へと、足を踏み入れる。



「先生早いよー!」

「何言ってんだ。もうチャイム鳴ってんだろーが。」

「先生今日もかーわいー!だから授業は無しにしてー!」

「お前らなあ…っいい加減にしないと、テストすんぞ。」



ふと、目が合う。
それだけなのに、高校生の時にでも戻ったかのように胸が高鳴る。



「えーっと、授業の前にお知らせがある。」

「何々、柚木先生、結婚すんのー?」

「違ぇよ。」



そう、俺は。



「竹中先生が倒れられたので、今日から、このクラスの担任になった。」



教師でありながら、生徒…しかも同性の生徒相手に、恋をしてしまったのだ。






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