SS戦国BASARA

□好きで悪いか!
1ページ/1ページ


※現パロ

(元生徒大学生×高校教師)



好きな人には触りたい。
街中で手とか繋いで歩いたり、髪の毛わしゃわしゃしたり、抱きついたり。
あわよくばキスとかその先の大人な展開とか期待しちゃったりして。



「おーい、三成ぃ。お前の可愛い恋人が暇してるぞー、イラついてるぞー。」

「黙れ、貴様が暇だろうが何だろうが私には関係ない。」

「ちぇ…ちょっとぐらい構ってくれたっていいじゃねぇーか、馬鹿。」



日曜日の昼下がり。
太陽の光が丁度良い具合に部屋の中に降り注ぎ、まったりとした空気を生み出している。



「なぁ、俺らって恋人同士なんだよな?」



いやあ、これは、我ながら女々しい台詞だと思った。

私達って付き合ってるの?恋人同士なんだよね?
その割には恋人らしい事とか、全然やってないような気がするんだけど。
ちょっとぐらい構ってよ、馬鹿。

昔付き合ってた彼女に言われ続けうんざりしたこの台詞。
それを自分が恋人に向けて言う時が来るなんて…
あの時の俺なら考えもしなかっただろうに。



「なんだ、急に。」

「いや、なんだかなぁ…付き合ってる感じがしなくて?」



この俺様にそんな恥ずかしい台詞を吐かせる原因となっている張本人、三成は
目を通していた本から顔を上げて、怪訝そうな表情を浮かべる。

大丈夫か?とでも言いたげな目だ。
そんな憐れんだ目で見るな、ちょっと泣きそうになるじゃないか。



「貴様が言う“付き合う”とはどういうものだ?」

「え?うーん、そうだな…楽しくおしゃべりして、キスして、いちゃこらして…」

「やめろ、寒気がする。」



俺とこいつ、石田三成が付き合いだしたのはいつ頃だっただろうか。

きっかけは本当に単純と言うかなんと言うか。
結論から言えば、三成に告白されて、断って、告白されて、絆された。

当時俺が受け持つクラスの生徒だった三成。
新米教師の俺の事を、三成は最初嫌っていると思ってたのだが…それは思い過ごし。
いきなり空き教室に呼び出されて、押し倒されて、キスされて、



『何すんだよ急に!』

『…柚木。いいか、一度しか言わないからよく聞け。』

『ぇ、』

『好きだ』

『はあ!?』



告白された。



『拒否は認めない。』

『嫌だ!拒否する!』

『認めないと言っている!観念して私と付き合え!』

『嫌だっつってんだろ!俺にだって選択肢はある!』

『私の何が気に喰わない?!』

『性別考えろ馬鹿!』



断っても断っても三成は俺を諦めなかった。必死だった。
不器用で、でも、好かれようとしている感じが必死に伝わってきた。
卒業するまでに好きにさせてみる!って宣言された時はちょっと嬉しかったな…

まあその後、なんやかんやで絆されて?
今、無事に大学生になった三成と、高校で教師を続けている俺はこうやって付き合う事となったわけだ。



「(最初の頃は可愛かったのに…)」



なのに…付き合いだした途端、何だこの放置プレイは。

そりゃ、こいつは元々こういう性格だっていうのはわかっていたが…
デートだっていうのに、家の中でゴロゴロ。
二人でゴロゴロじゃない。
三成は一人新聞や本やらを読んで、俺は何もすることなく一人ゴロゴロだ。

俺が不貞腐れている間に、三成はまた本に目を向けている。



「(もっと他にやる事があるだろうが、やる事が!)」



そりゃ、キスとか?まあ言えば性行為みたいなものとか?
年頃の男なら、がっついたっていいだろうに。

俺に魅力が無くてがっつけないと言うなら、なにも言えないが…俺も歳だし…



「…俺と本どっちが大事なんだよ、馬鹿。」



うわぁ…無い、これは無いわ、俺。



「…何だ、今日は特に変だぞ、柚木。」



流石の三成も心配してくれる。



「いつも変みたいな言い方すんなよ。」

「いつも変だろう。」

「ほんっっとに可愛くないよな、お前。」

「大きなお世話だ。で、結局何なんだ。何が言いたい。」

「だからあ、愛が足りないなぁ、みたいな?」



三成の顔が硬直した。
なんだこれ、何でこんなにドン引きされなきゃならんのだ。

俺なんか変な事言った!?
ちょっとラブラブしたいだけじゃん、恋人とかできて浮かれたいだけじゃん!
この歳になるとちょっと一肌恋しかったりしるだけじゃん…っ!



「……女々しい事を言うな。気持ちの悪い。」

「気持ち悪いって…お前、それが年上に対して言う台詞か?ちょっとは気遣え!」

「貴様に遣う気などない。」



それが恋人に対する台詞か!?

と、文句の一つや二つ、ガツン!と言ってやりたいところなのだが…
生憎これが俺の恋人の性格なので、どうする事もできないのだ。
こういう事に慣れてしまったから、ラブラブな空気も生まれないのだろうか。



「よかったな、俺が器のでかい人間で。」

「自分で言っていて恥ずかしくないのか?」

「別にぃ…てか、普通の人間ならこの時点で別れ話切りだしてるっての。」



そうだよ、俺の器量すごいよ。
自分で自分を褒めてあげたい、なんか頑張ったで賞とかあげたい。



「……貴様は、別れたいと、思うのか?」

「え?うん、まあ…昔の俺ならとっくに別れてるっていうか、愛想尽き…っ!?」



俺が言い終わる前に、視界が一気に反転し、カタイ床に背中が打ちつけられた。

痛!という声が洩れる。
何事かと目を開けてみると、天井を背に、今まで何にも反応をしなかった三成が、
怒りの感情を露にさせて、俺の手首をグッと握った。



「な、に…?」

「黙れ。」



有無を言わさず、三成が俺の口を塞いでくる。
柔らかいソレの感触に、ふるりと体を震わすと、三成は無理やり口をこじ開け、舌を侵入させてきた。
ピチャリ、と卑猥な水音が耳の奥に響く。
今まで甘い空気も何も無かったのに、急にのぼせたかのように頭がボーっとする。



「ん、ぅ…っ、みつ、なり、」



名前を呼ぶと、三成はすんなりと口を離し、手首を掴んでいた手を下の太ももあたりに滑らせてきた。



「な!?お、まえ何してんの!?」

「何だ、これを望んでいたんじゃないのか。」

「え、いや、え、ええ?」

「…柚木。」

「み、耳元でしゃべるんな…!」



やばい、やばいやばいやばい、やばい!
何で急に盛ってんの!?つーか何この急な大人展開!!



「別れるなど、許さない。」

「わ、かれるなんて言ってない…っ」

「似たような事を言った!」

「っ、おい、そこ触んな!…ぅぁ…」



まだまともなデートとかしてないのに、急に大人な世界に行くの?
俺ついに禁断の世界に踏み入れるの?
期待してたけど、ちょっと待って急すぎてちょっと心の整理が…!!



「(…あれ?)」



期待、とは裏腹に、三成は俺の肩に顔を埋めたまま、動かなくなってしまった。
どうしたのかと顔を覗き込んで見るが、見えないようにすぐ顔を背けられる。



「…私は、人に好かれるような人間ではない。」

「え?」

「だが…私は…柚木。貴様には好かれたいと、思った。」



今まで俺の脚やら息子やらを触っていた手が背中に周り、ギュッと抱きしめられる。
床と三成に圧迫され息が苦しかったが、ちょっと我慢した。



「別れるなんて許さない。私から離れるな。」

「…それは、俺に選択肢はあるのか?」

「選択などさせない、これは命令だ、が…貴様が嫌だと言うのなら、私は…」



確かに、普通の人なら別れている、とは言ったが…
俺は別れるなんて一言も言ってないし、あんな事で別れてるなら、もうとうの昔にわかれている。
というか、告白すらも承諾していない。

黙って三成の方に顔を向けていると、視線がくすぐったかったのか、三成もこちらの方へ顔を向けてくれた。
泣きそうな、どうすればいいのか、わからない表情。



『柳瀬柚木。貴様が私の心を掻き乱したのだ、責任を取ってもらう。』

『拒否など、認めない。』



告白された時見た、あの表情。
受け入れてほしい、拒まないでほしい、でも強制して嫌われたくない。
そんな表情をしている。



「んな顔すんなよ、俺まで泣きそうになる。」



ぽんぽん、と頭を撫でると、三成は安心したように息を吐き、表情を和らげた。



「なぁ、三成。」

「…何だ。」

「続き、しよっか。」



またも三成の顔が硬直する。
折角和らいだのに、また硬くしてどうすんだよ、馬鹿。
男前が台無しじゃないか。



「貴様、正気か?」

「正気も何も、お前から仕向けてきたんだろ。」



つーか、さっきまで弄られていたからか、体の熱が…下がらない。



「俺さあ、今こうやって抱きしめられて、キスされて、すっげぇ嬉しいんだわ。」

「…本当か?」

「ああ。つーか、もう離れられないってか、なんつーか…ええっと…」



全く興味もなかった、生徒の一人を
こんなにまで好きになって、夢中になって、俺を見てほしいと思うなんて。
構ってほしいとか、キスしたいとか思うなんて。

…有り得ない。こいつ以外、考えられない。



「お前が思ってる以上に、俺、三成の事、好きだからな!別れるとかしないからな!
 お前が別れたいって言っても別れてやんねーからな!!」



鳩が豆鉄砲を喰らったような顔、とはまさにこの事を言うのだろう。
三成は面白いぐらいに、きょとんとした表情を浮かべた。

だが、呆けていた三成の綺麗に整った顔が、次第にくしゃりと潰れていく。



「馬鹿か、貴様は。」

「馬鹿で結構!そんな馬鹿を好きなお前はもっと馬鹿なんだからな!」

「承知の上だ。」



三成が笑った。



「(まだまだガキなんだな、こいつ。)」



俺はこの…こいつの滅多に見せない笑顔に、一番弱いんだ。



「柚木。」

「ん?」

「…愛している。」



何と乙女なシュチュエーションなんでしょう。
俺も愛してる、とか思ってしまう自分の乙女思考に、偶に吐きそうになるが…

惚れた者の負け。絆された者の負けとしておいた。



「俺も、愛して…やらないことも、ない。」

「…貴様には躾がいるようだな。」



好きなんだもの…好きで悪いか。



「うるさいな!こういうの慣れてなくて恥ずかし…っておい!何すんだ!」

「ナニだ。少し黙れ。」

「ナニって、ちょ、うわ、待てよ、まだ、準備が…!」



この、俺は翌日の仕事を腰痛で休む事になる…という展開はまあ安易に想像できた。





.


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ