SS戦国BASARA

□特製忍ノ飯
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石田軍に雇われて
石田三成という将の護衛兼世話役を命じられ

早半月



「またご飯食べてないんですか…」

「なんだ、柚木か。」

「悪かったですね、柚木で。」



いつも大体こんな感じ
慣れというものは恐ろしいものだと、
身を持って痛感してしまう

恐ろしや、ああ、恐ろしや



「用が無いのならさっさと出て行け。」

「用なら、膳を下げに参りました。」

「ならとっとと下げろ。」



下げろって言われても
まだ何も口にしてないじゃないか



「殿、腹が減ってはなんとやら。
食事を取らねば次の戦で…」

「黙れ。」



ああ、さすが

気難しく、無駄に不器用で
真っ直ぐで、怖くて近寄りがたい

と、口を開けば
最悪の評判しか出てこない殿様



「いい加減ご飯食べてくださいよ。」

「貴様に私の食事のことまでとやかく言われる筋合いはない。」

「ですが、私は殿を心配して」

「私に口答えする気か?」



愛らしい、愛おしい
この気持ちを、一体あの時の私は、彼の何処に抱いたのか

…自分が知りたい

背を向けたままの殿
これ以上何を言っても駄目だと諦め、御膳を手に取った



「殿は、何なら食べてくださいますか?」



人が一生懸命作ったご飯をこんなに無下に遇うとは、石田三成という男は、一体何を考えているのだろう



「さあな。」

「私がご飯を作ったら、食べてくださいますか?」



殿は不思議そうにこちらに顔を向けた

目があっただけなのに、柄にもなく心が躍る



「……作れ。」

「へ?」

「なんだ?貴様が作ると言ったんだぞ。」



これは…



「…た、食べてくださるのですか!?」

「…知らん。」

「ま、待っててください!今すぐ作ってきます!!」



ただの忍び風情が…
わけのわからない殿さまのために
一体何やってんだか

ああアホらしい



「殿、との!とーの!!」

「ええい、うるさい!!聞こえている!!」

「ささ、柚木が作った特製御膳!たんとお食べくださいまし!」

「……!?」



黒い物体しか乗っかっていないのは

気のせい、気のせい

忍びだからってね?
料理、できるわけじゃないんです
できないわけでもないですが

ほら、食べられる程度には、ね



「これから毎日、三食、この柚木がご飯を用意しますね。」

「ま、待て柚木!これはご飯と呼べるもので」

「体内に入って栄養さえ吸収できれば泥とてご飯になります。」

「私に泥を食えと言うのか!!貴様、許さん!!」



忍びと主の追いかけっこ
なんとも変わった光景だろうか

それでもこの感情を剥き出して追いかけてきてくれることに
喜びを感じる自分が居る



「私が作ったら食べるって言ったじゃないですか。」

「最低限食えるものを出せ!」

「食べれますって、多分…」

「多分だと?殺す気か貴様!」

「食わず嫌いは駄目ですよ、三成様。」

「名を呼ぶなぁ!!」

「はいはい。(相変わらず、面倒な生き方してんなあ。)」

「貴様…待て!残滅してやる!」



殿が刀を投げた先に
刑部さんの姿があったこと

御膳のご飯が綺麗に無くなっていたことも


また別の話




.


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