SS戦国BASARA

□PUPPET
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「(…今日は、何人、殺した?)」



辺りに広がるのは死体の山。

ついさっきまで戦が行われていたこの地に立っているのは、私一人だけだった。


相手の武将の目が自分を見ている。

ついさっきまで生きてたのに。
疲れただろうね。あっちの世界は平和かな。



「(あぁ、なんでこう、人は儚いんだろう。)」



あなたもそう思うでしょ、武将さん?



「もう、聞こえないか。」



残念だね。
この国の未来がどうなるのか見ずに逝っちゃうなんて。



「おーい柚木。何死体と見つめあってんの。」

「佐助。生きてたんだ。」

「俺様を誰だと思ってんの?」

「真田のオカン。」

「はぁ……おい、目逸らせ。引きずり込まれるぞ。」

「わかってる。ただ、最後に愚痴を聞いてもらってただけよ。」

「愚痴?死体に向かって?」

「うん。」

「柚木は本当に変わり者だな。」

「余計な御世話。」



ねぇ、武将さん?



「戦に出るの、久々だったのか?」

「何で?」

「いや、ちょっと気になっただけ。」

「そう。」



この手が真っ赤な血で染まっていくのを見るたび、不思議に思う。
何で私は人を殺しているのだろう?私は何のために忍びになったのだろう?

人を殺して生きる世の中に何の意味があるのだろう?



――時々無性に怖くなる。



大切な人が横でふと倒れる瞬間。
見たくない赤色の飛沫と、その色に染まる自分の手。



「たっく…ほら、帰るぞ。」

「え?」

「人形みたいな面しちゃってさァ…忍びだからって我慢する必要ないんだぜ?」



そう言いながら佐助は私の前に屈みこんだ。

どうやら、背中に乗れと言っているらしい。



「いつ気付いたの?足怪我してるの。」

「俺様なめんなよ、ばーか。」

「馬鹿じゃない。」

「いや、馬鹿だね。いっつもいっつも我慢ばっかりしてるし、チビだし。」



ちびは関係ないだろう。

佐助の背中に身を預けながら、ボーっと空を眺める。
人の体温というものはこんなにも温かいものだったのだろうか?

それとも、自分の体温が上がっているのだろうか。



「なぁ、」

「…?」

「所詮、俺ら忍びも人間なんだ。泣きない時は泣けばいい、笑いたきゃ笑うがいい。
 死ぬ時は死ぬ。それが人ってもんだ。」

「…」

「だったらよ、後ろばっか気にしないで、前だけ見て進もうや。
 案外突っ走るのも楽しいもんだぜ?」

「…」

「…って、聞いてないか。」



馬鹿みたいに心臓がバクバク言っている。

あぁどうしよう。
こうなったもの佐助のせいだ。


――だからあの時、私は“俺”を殺せなかったんだ。



「…お前は俺様の背中だけ見てな。それ以外は何も見なくていい。
 勝手に死んだら…殺してやる。」



あぁ、それもいいかもしれないと思う自分の心は…
この男の手によって人形のように踊らされているのかもしれない。





PUPPET





忍びが忍びの操り人形?

大変だよ、武将さん。私、忍び失格だ。






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