SS戦国BASARA
□深い穴におっこちた
1ページ/1ページ
※現パロ
(生徒×教師)
最初見た時から、変な奴だなあとは思っていた。
前髪は真ん中に寄せられているし。
目つき何かこれでもかと言うぐらいに悪いし。
滅茶苦茶家康の事嫌いだし。
性格とか最悪だし。
俺が言うのもなんだが、こいつはすっごく生きにくい奴だと思う。
「…………」
「………ぐぅ、」
そんな奴が、何故、俺の机で寝ているのだろう。
「何だろなあ、この状況。」
此処は空き教室で、勝手に改造して準備室代わりにしてもらっている、俺専用の教室だ。
許可のない者は立ち入らせないようにしている。
鍵だってちゃんとかけていたはすなのに…何故此処にこいつがいる。
「石田だよな?石田三成だよな?こいつ。」
石田三成。俺が受け持つクラスの生徒。
評判も悪いし、あまり良い噂も聞かない生徒だ。
スヤスヤと、気持ち良さそうに眠る石田の顔をのぞく。
思っていたよりも綺麗な顔立ちをしていた。
髪形は変だが、髪の色はとても綺麗だ。睫毛も同じ色で、長い。
色も白いし、身長もあるし、声も、今思えば良い方じゃないだろうか。
「…勿体ねぇの。」
普通にしていればかっこいいのに。
髪に触ってみると、思っていた以上に柔らかかった。
肌に触れてみると、思っていた以上に冷たかった。
「(何やってんだ、俺…)」
起きませんように、なんて願いながら石田に触れる。
「何をやっている。」
「うわ!?」
髪に触れていた手を掴まれたと思うと、目の前にある石田の目が開かれた。
ばっちりと眼が合う。
言いわけなんてさせてもらえそうにないぐらい、睨まれている。
「起きてたのか…」
「貴様が部屋に入ってきた時から意識はあった。」
「(しかも最初からかよ…っ!)」
自分の失態に顔が熱くなるのを感じた。
タイミングを逃した、とか、ぶつぶつ言いながら、石田は体を起こす。
「…あのさ、ここで何してんの?俺に用?」
「これを、竹中先生に渡す様に頼まれた。それだけだ。」
プリントを受け取り、内容に目を通す。
できるだけ、何事もなかったかのように取り繕い、俺は石田に向かって礼を言った。
ありがとう、もういいよ。
そう言ってはみたものの、石田は未だに俺の手を離そうとはしてくれない。
それどころか、手を掴む力が強くなっているのは気のせいか。
「えっと、何?どうしたの?」
「………」
沈黙。
しかも、すごく、重い沈黙。
「…っ!?」
沈黙に負けじと石田を見ていると、不意に唇を塞がれた。
「な!?お前!!」
「うるさい。」
黙れ、と耳元で囁いたと思ったら、石田はまた俺の唇を塞ぐ。
何度も、何度も。
角度を変えては塞がれ、息も絶え絶えになってくる。
酸素を吸おうと口を開くと、ぬるりと生ぬるいものが侵入してきた。
ぴちゃり、と水音が静かな室内に響き、その音に耳の奥が熱くなる。
抵抗をしてみたものの、石田は抵抗する体を抑えつけるよう俺を床に押し倒した。
かさり、と服の擦れる音。
やばい、これはやばい、本気でやばい。
「っあ、止め…ろっ!!」
絡まれた脚を利用して、石田の体を反転させ、ぐっと腹を抑えつけた。
ようやく唇を解放され、一先ず息をつく。
急に反転させられたからか、石田はキョトンとした顔つきで俺を見上げている。
間抜けな顔。
笑ってやろうかとも思ったが…身の危険を感じるのでやめておこう。
「貴様、何をする。」
「それはこっちの台詞だ!」
変な奴だとは思っていたが…
まさか、そっちの趣味がある奴だったとは、知らなかった。
「お前さあ、急に人の事襲っといて、一体何なんだよ。」
「…」
「何、まさか、俺の事好きなわけ?」
きょとん。
「…好きだ。」
「へ?」
「好きだと言っている。」
今度は俺の顔がきょとんとしていることだろう。
からかうつもりで…
冗談半分で言ったのに、今、こいつなんて言った?
「……冗談。」
「冗談などではない。」
「いや、冗談!こっちが冗談!」
「好きと冗談で言えると思うのか!?」
「思わねぇよ!てか、おま、俺いくら童顔でも男で教師だぞ!?」
「知っている。」
「知ってるって…それわかってそんなこと言ってんの?」
石田が体を起こした。
それによって、俺は石田の上に向かい合わせで座っている状態になっている。
…なんと気恥かしい。これが俗に言う羞恥プレイか。
「お前、今、何歳だっけ。」
「…17」
「俺、27歳。」
「おっさんだな。」
そう、俺はおっさんだ。
恋だ愛だの現を抜かして生きていける歳じゃない。
現実を見なければいけない歳なのだ。
「ああ、おっさんだよ。27歳で、安月給で、酒大好きで、体たらくなおっさんだ。」
何で俺は、満更でもない、とか思っているんだろう。
あれだ、久しぶりに人に好きだなんて言われたから。
少し気が動転して、舞い上がっているだけだ。
そうに決まっている。
ドキドキするのは、ほら、動機だ。
もう歳だから。更年期に近づいていく歳だからドキドキするんだ。
そうに決まっている。
「…そんなおっさんが好きとか、お前終わってるな。」
「貴様に私の趣味をとやかく言われる筋合いはない。」
「それもそうだ。」
ぎゅ、と抱きしめられる。
「好きだ。」
「嫌、」
「好きだ。」
「嫌いだ。」
「柚木、」
「…柳瀬先生だろ。」
「…好きだ。」
「嫌いだ、俺は、お前なんか…っ」
「…嫌わないでくれ、先生。」
「…っ、」
やばい、おちた。
深い穴におっこちた。
「っああ、もう!いいよ、もう!!どんだけ可愛いんだよ、お前!!」
体を離し、石田の顔を見る。
前髪は真ん中に寄せ。
目つき何かこれでもかと言うぐらいに悪い。
性格とか最悪。キス魔。変態。
で、俺のことが好き。
「卒業するまで俺の事が好きだったら付き合ってやる。」
「!」
「お前の事を好きだと思わせろよ?卒業するまでに。」
「…望むところだ。」
ちゅ、と触れるだけの軽いキス
ハハ、と乾いた笑い声が洩れる。
どうしよう。前言撤回なんて、もう無理だ。戻れない。
「私の事以外考えられないぐらい、愛してやる。」
「…うわー、すっごい殺し文句。」
前略、田舎のおふくろさん。
俺は親不孝者です。不甲斐無い息子をお許しください。
「好きだ、柚木。」
「…柳瀬先生、な」
変な人を好きになってしまいました。
.