SS戦国BASARA

□深い穴におっこちた
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※現パロ

(生徒×教師)




最初見た時から、変な奴だなあとは思っていた。

前髪は真ん中に寄せられているし。
目つき何かこれでもかと言うぐらいに悪いし。
滅茶苦茶家康の事嫌いだし。
性格とか最悪だし。

俺が言うのもなんだが、こいつはすっごく生きにくい奴だと思う。



「…………」

「………ぐぅ、」



そんな奴が、何故、俺の机で寝ているのだろう。



「何だろなあ、この状況。」



此処は空き教室で、勝手に改造して準備室代わりにしてもらっている、俺専用の教室だ。
許可のない者は立ち入らせないようにしている。
鍵だってちゃんとかけていたはすなのに…何故此処にこいつがいる。



「石田だよな?石田三成だよな?こいつ。」



石田三成。俺が受け持つクラスの生徒。
評判も悪いし、あまり良い噂も聞かない生徒だ。

スヤスヤと、気持ち良さそうに眠る石田の顔をのぞく。

思っていたよりも綺麗な顔立ちをしていた。
髪形は変だが、髪の色はとても綺麗だ。睫毛も同じ色で、長い。
色も白いし、身長もあるし、声も、今思えば良い方じゃないだろうか。



「…勿体ねぇの。」



普通にしていればかっこいいのに。

髪に触ってみると、思っていた以上に柔らかかった。
肌に触れてみると、思っていた以上に冷たかった。



「(何やってんだ、俺…)」



起きませんように、なんて願いながら石田に触れる。



「何をやっている。」

「うわ!?」



髪に触れていた手を掴まれたと思うと、目の前にある石田の目が開かれた。

ばっちりと眼が合う。
言いわけなんてさせてもらえそうにないぐらい、睨まれている。



「起きてたのか…」

「貴様が部屋に入ってきた時から意識はあった。」

「(しかも最初からかよ…っ!)」



自分の失態に顔が熱くなるのを感じた。

タイミングを逃した、とか、ぶつぶつ言いながら、石田は体を起こす。



「…あのさ、ここで何してんの?俺に用?」

「これを、竹中先生に渡す様に頼まれた。それだけだ。」



プリントを受け取り、内容に目を通す。
できるだけ、何事もなかったかのように取り繕い、俺は石田に向かって礼を言った。

ありがとう、もういいよ。
そう言ってはみたものの、石田は未だに俺の手を離そうとはしてくれない。
それどころか、手を掴む力が強くなっているのは気のせいか。



「えっと、何?どうしたの?」

「………」



沈黙。

しかも、すごく、重い沈黙。



「…っ!?」



沈黙に負けじと石田を見ていると、不意に唇を塞がれた。



「な!?お前!!」

「うるさい。」



黙れ、と耳元で囁いたと思ったら、石田はまた俺の唇を塞ぐ。

何度も、何度も。
角度を変えては塞がれ、息も絶え絶えになってくる。
酸素を吸おうと口を開くと、ぬるりと生ぬるいものが侵入してきた。
ぴちゃり、と水音が静かな室内に響き、その音に耳の奥が熱くなる。

抵抗をしてみたものの、石田は抵抗する体を抑えつけるよう俺を床に押し倒した。

かさり、と服の擦れる音。
やばい、これはやばい、本気でやばい。



「っあ、止め…ろっ!!」



絡まれた脚を利用して、石田の体を反転させ、ぐっと腹を抑えつけた。
ようやく唇を解放され、一先ず息をつく。

急に反転させられたからか、石田はキョトンとした顔つきで俺を見上げている。
間抜けな顔。
笑ってやろうかとも思ったが…身の危険を感じるのでやめておこう。



「貴様、何をする。」

「それはこっちの台詞だ!」



変な奴だとは思っていたが…
まさか、そっちの趣味がある奴だったとは、知らなかった。



「お前さあ、急に人の事襲っといて、一体何なんだよ。」

「…」

「何、まさか、俺の事好きなわけ?」



きょとん。



「…好きだ。」

「へ?」

「好きだと言っている。」



今度は俺の顔がきょとんとしていることだろう。

からかうつもりで…
冗談半分で言ったのに、今、こいつなんて言った?



「……冗談。」

「冗談などではない。」

「いや、冗談!こっちが冗談!」

「好きと冗談で言えると思うのか!?」

「思わねぇよ!てか、おま、俺いくら童顔でも男で教師だぞ!?」

「知っている。」

「知ってるって…それわかってそんなこと言ってんの?」



石田が体を起こした。
それによって、俺は石田の上に向かい合わせで座っている状態になっている。

…なんと気恥かしい。これが俗に言う羞恥プレイか。



「お前、今、何歳だっけ。」

「…17」

「俺、27歳。」

「おっさんだな。」



そう、俺はおっさんだ。
恋だ愛だの現を抜かして生きていける歳じゃない。

現実を見なければいけない歳なのだ。



「ああ、おっさんだよ。27歳で、安月給で、酒大好きで、体たらくなおっさんだ。」



何で俺は、満更でもない、とか思っているんだろう。

あれだ、久しぶりに人に好きだなんて言われたから。
少し気が動転して、舞い上がっているだけだ。
そうに決まっている。

ドキドキするのは、ほら、動機だ。
もう歳だから。更年期に近づいていく歳だからドキドキするんだ。
そうに決まっている。



「…そんなおっさんが好きとか、お前終わってるな。」

「貴様に私の趣味をとやかく言われる筋合いはない。」

「それもそうだ。」



ぎゅ、と抱きしめられる。



「好きだ。」

「嫌、」

「好きだ。」

「嫌いだ。」

「柚木、」

「…柳瀬先生だろ。」

「…好きだ。」

「嫌いだ、俺は、お前なんか…っ」

「…嫌わないでくれ、先生。」

「…っ、」



やばい、おちた。

深い穴におっこちた。



「っああ、もう!いいよ、もう!!どんだけ可愛いんだよ、お前!!」



体を離し、石田の顔を見る。

前髪は真ん中に寄せ。
目つき何かこれでもかと言うぐらいに悪い。
性格とか最悪。キス魔。変態。

で、俺のことが好き。



「卒業するまで俺の事が好きだったら付き合ってやる。」

「!」

「お前の事を好きだと思わせろよ?卒業するまでに。」

「…望むところだ。」



ちゅ、と触れるだけの軽いキス

ハハ、と乾いた笑い声が洩れる。
どうしよう。前言撤回なんて、もう無理だ。戻れない。



「私の事以外考えられないぐらい、愛してやる。」

「…うわー、すっごい殺し文句。」



前略、田舎のおふくろさん。
俺は親不孝者です。不甲斐無い息子をお許しください。



「好きだ、柚木。」

「…柳瀬先生、な」



変な人を好きになってしまいました。




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