SS戦国BASARA

□小指の約束
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1600年
後に関ヶ原の戦いと語り継がれるその戦は、長き乱世の時代を終わらせた。

誰もが願った太平の世…
まさか本当にあの乱世の時代が終わる日が来るなんて、誰も考えやしなかったのに。



「平和だなぁ…」



こんなに何もせずに城の中から空を見上げたことがあっただろうか。



「おお、ここにいたのか。」

「家康様」



探したぞ。なんて言いながら家康様は私の横に座り込む。



「用があって探してみたら部屋にいないし、昼飯の時間になっても来ないし…」

「す、すみません。」

「構わんよ。こうやって見つけだせたし…ただ、城を出たのかと思って心配したぞ。」

「まさか。こんな割のいい主、家康様しかいませんよ。」



出て行くなんてもったいない。
そう冗談めいて言うと、家康様は心底嬉しそうな顔を浮かべ、そうか。と一言呟いた。

天下人でもある徳川家康公。
こんな狸のように愛らしい顔をした人が天下を取るだなんて。



「で?お前はここで何をしてたんだ?」

「ああ、すみません。時間を忘れてボーっと…」

「ははっ、乱世が終わって気が抜けたか?」



抜けたどころじゃない。
抜けすぎた。抜けすぎてフニャフニャになって、何をするにも怠惰になってしまっている。

それを話すと、家康様はまた大層な笑顔を浮かべた。



「やっとお前が息を抜ける世になった、というわけか。」

「…そうですね。」



息を抜ける。戦わずに済む。
もう誰も傷つけない、誰の血を見なくて済む。

戦が無い世。
戦忍の私は商売あがったりだ。



「まだ色々と不安はあるが…民の血が流れることはもうないだろうよ。いや、ワシが流させはしない。」

「(…そうやってまた、全部抱えて生きていくのか。)」



すべて抱え込んで、絆という不確かな繋がりを信じて。



「…凄いなぁ、家康様は。」

「え?そ、そうか?」

「ええ、凄いです。少なくとも私は、家康様みたいにはなれないと思いますよ。」

「うーん、そんな大それたもんじゃないんだがな。」



家康様は照れ臭そうに目線を背け、ポリポリと頬をかいた。

いかん、いかん。
不覚にも可愛いじゃないか、と思ってしまった。
ふるふると首を振って、なんとか気を紛らわす。



「ところで家康さん。先程用があって私を探していたって聞きましたが…」

「ん?ああ、そうだった。」






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