小説2

□*幼なじみor恋人?
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ズキンッ・・・・・
小さな痛みが走る。



キーンコーンカーンコーン・・・・・・
丁度授業終了のチャイムが鳴る。


「あ、授業終わったか。萩原、教室戻ったら?俺がここに居るし」
「え、でも・・・・・・」
「あたしは大丈夫だって!だから陽一も教室戻っていいよ!」


ナイス堂上さん!
そうすれば手塚君と一緒に教室まで行ける!
なんて思ったけど・・・・・


「ダメだ。監視してないと何しでかすかわからないからな。素早く止められるの俺だけだし」
「陽一あたしに失礼じゃない!?」
「何年ずっと一緒に居ると思ってんだ。長年の経験から出した結果だろ」


“ずっと一緒”
その言葉が深く胸に刺さる。


私は堂上さんより
女らしいし、料理できるし、頭も良い。


私は手塚君の“表面”が好きになってた。
容姿とか。


だけど私は手塚君の“内面”は全然知らない。

いつも手塚君の事を見てきたのに、初めてみた彼の姿が沢山あった。


多分堂上さんにしか向けられない姿。彼女しか知らない彼の姿。



二人の会話とか雰囲気とか、ただの幼なじみだとは思えない。
お互い素でやってる。



手塚君は彼女にしかおもいっきり素を出してないんだ。



彼の特別は彼女。
私じゃない。



「あ、じゃあ先に行ってるね」
ここに居るのが辛くて、素早く保健室を出ていく。




「失恋決定かな・・・・・・・」

堂上さんが相手なら勝ち目は私にとってない。

彼女は明るくて元気で運動神経抜群で、モデルみたいなすらっとした体型・・・・・そして、誰からも好かれている。

彼女と同じ名前なのに。
私に望みはないのだろうか・・・・・・。





放課後。
このまま思いを伝えずに諦めるのは嫌だと思い、勇気を振り絞って手塚君を呼び出した。


時間通りに彼は来た。


「萩原、話って何?」
「あのね・・・・・・私」


すっと、前を向く。
彼の綺麗な瞳を見つめて。


『手塚君が・・・好き』


やっと言えた。
彼は一瞬困った様だったがすぐ答えを出してきた。


『ごめん』


わかってたはずだけど、本人から直接言われると結構辛い。
それでも笑う。
・・・・・ひとつ気になる事を聞く。


「わかってたんだ。手塚君は堂上さんが好きだから無理だって」
「!?」
彼は驚いた表情をする。
ばれてないと思っていたのだろう。
バレバレだよ。

「聞いてもいい?」
「何を?」
「どうして・・・堂上さんなの・・・・?」

何故彼女なのだろうか。
一番気になっていた。
彼女より可愛い子は沢山いるのに。

「・・・・・・・何でって・・・・・・あいつは、生まれた時から一緒だったし・・・・てか、」

はっきりと彼は言った。

「あいつを好きになった理由は説明できない。気づいたらあいつの存在は特別だったから」


説明できない程・・・・彼は彼女に惚れてるんだ・・・・。
改めてそう思う。


「手塚君、私の名前も『のぞみ』なんだ。最後のお願いなんだけど・・・私を下の名前で呼んでくれない?」

私の最後の我が儘・・・・・。

「悪いな。下の名前で呼ぶのはあいつだけって決めてるんだ。喩え同じ名前でも」
「・・・そっか。無理なお願い言ってごめん。私からの話はこれだけだから」
「・・・・あぁ。またな」

手塚君はその場を去る。
残ったのは私一人。


「失恋決定!」
不思議と涙は出てこない。不思議・・・・・。

『陽一!あたし一人で大丈夫だって!』
門の方から堂上さんの声が聞こえた。
隣には手塚君。

『怪我人一人で帰させられるか!どーせ同じ官舎なんだからいいだろ』
『わかったわよ〜』

二人はたわいのない会話をして帰って行く。

いいな・・・・・・。
でも、手塚君の事は吹っ切れた。



萩原望美。
今日失恋しました。
でも、また新しい恋をしようと思います。

今度は“表面”ではなく、“内面”を好きになれるような人を。


そして手塚君。
あなたの幸せを祈ります。
私の初恋の人の幸せを・・・。




end
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