Short

□煙草と教室と忘れ物と、
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いつも聞こえるはずのチャイムが聞こえない。



代わりに聞こえるのは、校庭からいつもより騒がしく聞こえる生徒たちの歓声の数々。
とっくにホームルームは終えたというのに、今日ばかりはZ組の連中もすぐには帰らず校庭で騒いでいた。




「いつもはさっさと帰るくせになァ……」


その様子を俺はZ組の教室から眺めていた。
生徒たちはいないので、誰にも文句を言われず煙草を吸いながら。




「さて…と、だ」


校庭から目を離し、教室を見渡した。

まず目に入るのは、生徒たちのメッセージが所狭しと描かれている黒板。
女子を中心に書き出したんだろう、色鮮やかに書かれていた。


教卓の前に移動し、生徒たちの机を眺め回す。
ふと、一人の生徒の机に目が行った。窓際の一番後ろの席。
確か……沖田の席だったよな?

机の上に何か白い物が乗っかっていた。
気になって、近付きそれに手を伸ばす。



「……紙ヒコーキ?」

白い物の正体は、沖田お手製の紙ヒコーキ。
そういやあいつ、良くテストとか返却したらすぐ作って遊んでたな。

俺はそんな事を思い出し、今度は何の紙が犠牲になったのか気になって紙ヒコーキを丁寧に開いた。




「…オイオイオイ……」


開いた途端、俺は思わず苦笑した。
その紙はついさっき校長から受け取った、卒業証書だった。

あいつらしいといえば、あいつらしいか……。

俺は頭を掻き悩んだ末、卒業証書を紙ヒコーキの状態に戻し元の場所に置いた。



気付けば、神楽の机には酢昆布、土方の机にはマヨネーズ。志村姉の机には…未確認物体が敷き詰められているであろう弁当箱。
他の奴らの机にもちらほら忘れ物があることに気が付いた。


一人くらいだったら届けてやっても良かったが、こんだけいたらその気も失せる。
誰か一人くらい忘れ物に気付くだろう。来た奴に全員呼ばせれば良いや。


そう納得し、唯一忘れ物をしてない地味キャラ、新八の席に腰を下ろした。










今日は3月25日。
あいつらの卒業式だった。


一時はどうなるかと思ったが、生徒たちはそれぞれ進学、就職と進路は決まりこうして今日卒業する事が出来た。
俺はといえば、来年度またこの銀魂高校で生徒を迎える事が決まっている。
というかお登勢の言い付けで、俺はこれから暫くここに居座らなければならないらしい。理由は知らないが。














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