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□泣き虫の悩み
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「高杉ィ!!」


高杉が負傷した、という情報を鬼兵隊の連中から知らされたのは戦から帰ってついさっきの事。
俺は着替えることもせず直で高杉の様子を見に急いだ。


「……うるせえよ銀時。傷に響くだろうが」

「――!!」


薄暗い部屋の中で見た光景は、負傷した左目を包帯で覆っていた高杉の姿。
血は止まったようだが……確実に失明してしまったんだろう。


「……なんてツラしてやがる」

「え……」

「泣きそうな顔してるぜ」


包帯を巻き終え、救急箱を片付け始めた高杉は鼻で笑った。


戦で犠牲が出るのは仕方の無い事。
それは分かっているが、俺には変わり果てて行く仲間の姿を見ていられなかった。
片腕を無くしたり、歩けなくなったり、片目を失明したり、最悪、動かなくなったり……。

その光景を目の当たりにする度、俺は泣きそうな顔になるらしい。
今だって包帯で見えなくなった高杉の左目を見て、泣きそうな顔をしてると高杉に笑われてしまった。



「……そりゃ悲しむだろ。俺はいつも対した怪我してねえのに、仲間ばっかり傷付いてる」


それは、俺は自分の事しか護れてないという事だ。
たとえ目の前の敵を斬ったとしても、すぐ横では別の敵が仲間を斬り捨てている。

敵の数を減らしても、仲間の数も減っていく。

戦なのだからしょうがないといえばしょうがないが、俺にとっては目を逸らしたくなる現実だ。
戦が終わる度、死体で溢れ返る戦場を見ていつも心を痛めていた。









「お前が心を痛めているのは、仲間の死だけじゃねえだろ?」



「!!………」



「仲間を護れない自分に対しての悔しさと、仲間に対しての申し訳無い気持ち。……全部自分のせいだとか馬鹿な事考えてやがんだろ?」







馬鹿な事ってなんだよ。
俺は仲間を見殺しにしてるようなもんじゃねえか。


白夜叉とか大層な呼び名があるくせに、実際はただの一人の人間。誰よりも戦場に出たくないと望んでいる、ただの臆病な泣き虫だ。

まあ……勝手に白夜叉って付けたのはどっかの誰かで、俺が白夜叉って名乗った覚えは一度もないけど。






納得いかない、思い詰めた顔をしていると、高杉は俺の脇を横切り部屋を出て行った。

「悪いのはお前だけじゃねえ、俺もだ」

そう一言残して。















仲間を助けたいという思いが限界まで溢れて、限界を超え零れた。



泣き虫な俺は、それをただ呆然と見ていることしか出来ない。







泣き虫の悩み

=仲間を護れない自分の罪



―END―


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