あ
□Maneuver
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溜まったジャンプを一掃しようと、夜中に万事屋から少し離れた路地裏に繰り出した。
今日は満月。
月明かりだけで、辺りは良く見える。ほとんどの家の明かりは消え、しんと寝静まる時間帯だった。
さっさと捨てて、さっさと帰ろ……。欠伸を噛み締めながらぼんやりと考えていたときだ。
満月の夜ってやつは、何かしら嫌な事が起こるみたいだ。
だって、ほら。
俺が今まさに入ろうと思っていた路地裏から、一人分の足音とポタッ、という液体が垂れる音が聞こえてきたから。嫌な予感しかしてこない。
…帰ろうかな。
いや、もしかしたら俺みたいにジャンプ捨てに来た人かもしれないし、音もひょっとすれば屋根に溜まった雨水が垂れてるだけかもしれないし……。無理矢理嫌な予感を押し殺し、路地裏を覗き込んだ。
「あれ、お兄さん?」
……やっぱり帰ってれば良かった。
完全に選択ミスった。
声がしたかと思えば、そいつは俺に歩み寄ってきやがった。
いや、こっちくんなって。
「……あは、珍しいね。お兄さんから俺に会いに来てくれたんだ」
世界中捜しても、返り血浴びて、両手真っ赤に染めた奴なんかにわざわざ会いに行く奴なんていないと思うんだけど。
いや、こいつなら喜んで行くかもな。
「……神威」
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