ポケスペ

□ぐだる465
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『さぁ、今年もあと一分を切りました!!』


「まじか!ちょっとやべーよどうしようシルバーっ!!」
「…もうそんな時間か」
「なんで本読んでんだよ。年越しはテレビだろ!」
「別にどんぐりの歌とかどうでもいいし」
「クルミちゃんだっつうの!!」
「…」
「どったの?」
「この時計遅れてないか?」
「あぁ?目覚まし時計なら朝合わせたけど?」
「後三分はあるぞ」
「えぇー?アレは?ポケギアは?」
「…何処かにある」
「また、なくしたのかよー?」
「………」
「…そこは否定しようかシルバーちゃん」

『はい、三十秒前です!カウントダウンを開始しましょう!!』

「やっべあと三十秒!!?」
「何慌ててんだ」
「今年こそは地球に居なかったってやりたいの!!」
「まだ来年だけどな」
「うっせーなポケギアなくしたくせに!」
「お前が持ってんじゃないのか?」
「えぇ?ないって多分」
「炬燵布団の下とかに隠れて、」


『あけましておめでとうございまあああす!!!』

「「っ!!?」」

「えええええ!!!??まじで!!!??」
「うーわー…」
「こんな感じ有りなの!!?ポケギア探してたんだけど!!?地球に居たんだけど普通に!!」

「…はやまるなゴールド!」
「いきなりなんスかそのノリ」
「こっちの時計はまだ年明けしていない!」
「んな乱暴な!!」
「テレビの時計が正確なんて誰が決めた」
「えぇー…」
「ほら、あと十秒!」
「ちょっ、」
「いくぞ、せーの」

   ぴょん

                ちゅ


   すとん


『…はい、多少の誤差はあったようですが…。…何はともあれ、新年です!!去年は色んな事がありましたね、』

「…シルバーってさぁ、」

甘い感触の残る唇を無意識で指をなぞりつつ、ゴールドはじっとりとした視線をシルバーに送った。

「意外と気にするんだな、こーゆーの」
「年に一回しかないんだからいいだろ」
「年に一回ねぇ…」

シルバーは炬燵布団をめくって、ポケギアを淡々と探している。
それが気に食わなくて、ゴールドはごそごそと炬燵に潜り込み、シルバーの座っている辺へ移動を開始した。

「…何」

ぴょこ、と炬燵の中から顔を出してきたゴールドに、シルバーは眉を潜めて言った。
答えるのも億劫で、ゴールドはシルバーを押し倒すように身を乗り出した。

軽く口付けると、まん丸の銀色と視線がかち合う。

それを見てゴールドは思い切り笑ってやるつもりだったのだけれど、想像以上に自分自身が動揺していた。


「…あけまして、…おめでとう…」

今年もよろしく、と続けた声はかすれて。
たまらず俯くと、ぎゅ、と抱き締められる。

「元旦っていうのは何でも有りだな」
「…年に一回だけだから」

気まずい空気、ゴールドにとってだけだが、それを破ったのは軽やかなポケギアの電子音だった。

「どこだ!?音はしてんのに…!」
「ゴールドの方じゃないか?」
「こっちは無いって多分…、」

ぷつ、電話相手は痺れを切らしたらしく、呼び出し音が切れる。
二人して気が抜けてしまって、二人して床に寝転がる。

「…結局グダグダだな、オレ達…」
「シルバーが目覚まし時計でやろうとすっからだって」
「あのグダグダよりはましだろうが」

「…よし!今年こそはテレビ時計でやるからな!」
「出来なかったらどうするんだ?」
「もち来年!それで無理なら再来年!ちゃんと付き合えよ?」
「分かってる」


『今年は一体どんな年になるのでしょうか?』
『皆様にとって素敵な年になりますように!』





お粗末さまでした。

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