ポケスペ

□崖
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雨が降っている。



どんよりとした黒く重たい雲は、朝からあった。
先輩が上空にわざを放った時は気が触れたのかと思った。まさか、雨を降らすためなんて。
しかもあめの時はかみなりが絶対当たるとか。聞いてないし。知らないし。
逆手にとってピチュを出そうとしたが、ボールに手をかけた所で、もう倒れていた事に気づいた。
やたらピチュ狙いだったのはそういう訳ね。内心で舌打ちをする。
なんとか主砲の五体目-ピカ-を倒したと思いきや先輩の六体目-フッシー-にあっけなくこっちの五体目もやられてしまった。
つまり、今は一対一。勝率が八:二のオレにしては上出来だ。ちなみに、悲しいかな、二が勝ちだ。

向こうは草でこっちは炎-バクたろう-。
相性はばっちりだが、天気が悪いのが痛い。
にほんばれしたら向こうも有利になっちまうし。準備なしのソーラービームはかなり怖い。
そんな訳で炎わざでガンガン攻めたてようとしたのだが、遠くからだと雨の所為で威力が減少しやがってツルで払われた。
近くに寄ろうとすればツルに捕まるし。捕まえてきたツルを全部焼き切って何とか逃げたが、次に捕まったらもうアウトだ。
もうやだ。相性なんか嫌いだ。全然役にたたねぇの!!

一旦距離を置いて山の森陰に紛れたが、バクたろうが危ない。
背中の炎が雨で、ちょっとずつだが確実に消えていってしまっている。長期戦だとこっちの分が悪いのは明らかだ。
いっそ、にほんばれってブラストバーンで一気に決めるか?
あぁ、でも後が怖い。HPを一でも残せば確実にソーラービーム行きだ。動けないし、ただでさえツルにHP割いちまってるから、一発でも当たれば確実にアウトだ。


どうしよう、考えてた所で茂みの中で何かが動いた。

痺れを切らしたツルだ。


「”かえんほうしゃ”!!」


出てきたツルは三本。さっき焼き切ったのも入れれば、もうツルは残ってない。筈だ。
ツルさえ無けりゃこっちのもんだ。近接戦に持ち込んでこっちの間合いに持ち込めば、バクたろうの速さならいける。勝てる。

しかし、世の中そう上手くはいかないようで。

唐突に、しゅっ、空気を切り裂く小さな音がした。



「っ、まじいっ!!?」



四本目のツルだ。



「っ、バクたろうっ、後ろ!!」



正確に言えば、焼き切るのは諦めて後ろに跳べ、という意味だ。
…我ながら、よく分かったと思う。さすがオレの相棒!!
バクたろうが後ろに跳んだのを追ってオレも走りだそうとして。



ずるり、足場が無くなった。


あとは重力に従って、
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