ポケスペ
□銀金
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オレには付き合っている人がいます。
抜けるような白肌、細くてしなやかな指、色の薄い唇、校則違反の赤い長髪、冷たそうな銀色の目。
非の打ち所が無い、とはこの事を言うのだと思う。
だけれども、一つだけ悪い所があります。
この世でただ一人、オレ限定で。
オレだけが悪い所だと感じる事。
それは、彼がオレの教え子だ、という事です。
***
「何してるんですか」
「オベンキョー」
オレの肩の上に、どっかり、顔をのせてんのがシルバー。
教え子、と言うとちょっと語弊があるのかもしれない。
だってオレは担任の訳でも、もとい、教師の訳でもない。
単なる教育実習生。言うならば大学生。
授業はやったりするから、その授業を受けたコイツは教え子になるのだろうか。
…今度先輩に訊いてみよう。
分からない事は先輩に!あぁオレいい先輩もって幸せだなー。
「手ぇ、止まってますけど?」
「わあってるっつの」
…年下にこんな注意されていいんかな、オレ。
…でも、まぁ、うん。
相手は頭でっかちで中身だけ大人な学年トップだ。言わせとけ言わせとけ。
なんせオレは三歳も年上。学年的に言えばだけど。
子供の事を受け止められる大人なんだから!
「先生、そこ綴り違います」
…学年トップ…、
「そこも。そっちは文法が違います」
…ちょっと待て、どこ行った三歳差!!
ってかコレはコイツ云々よりオレのレベルの問題っつーことに気づいちまったオレはどうすればいい!?
何かコイツと話してると自分が全然大人じゃねぇって事を、突き付けられるような気がする。
主に学力で。あとは、恋愛の経験値的に。
…どっちも突き付けられちゃ駄目な気がするんスけど…。
「なんかもう泣きたい…」
ぐしゃ、今まで書いていたプリントを握る。
明日の授業で使うものだ。
そのまま机に倒れて伏せた。
シルバーがオレの肩から退く。その分肩が軽くなる。
「大丈夫ですか」
「…大丈夫じゃねぇよ、カーバ」
大人になったと思ったのに。
子供に、お前は子供だろう、と言外に言われていて。
情けないよなぁ…。
こんな風に思うなんて、オレらしくもないけど。
全部全部、コイツの所為。
「…テメェの所為だ、カーバ」
「いきなりなんですか」
「いきなりじゃねぇよ」
前から思ってたよ。
お前といると狂うんだよ。
何がとは言えないけれど。
自分がおかしい、と感じるのだ。
柄にもなく考え込んだり、とか。
「何考えてるんですか?」
「…言わなきゃ、駄目?」
「……察しがつきました」
「っえぇ!?うっそ!?」
思わず体を起こすと、シルバーはにやり、笑った。
「そんなに想って頂けるなんて光栄です」
「…むっかつくわー、お前」
綺麗な笑みを浮かべて抜かしやがるものだから、ぽろり、漏れた。
「…シルバーは?」
「なにがですか?」
「察しろ!馬鹿!」
突然、ぐっと腕を掴まれた。
引き寄せられて壁に押し付けられる。
コンクリの壁は冷たい。
「好きです。言ったでしょう?」
「………本当に?」
「何で疑ってんだよ、ゴールド」
ふと崩れる口調がずるい。
いつもは先生って呼ぶくせに、時々名前で呼ぶのもずるい。
「…実習さ…明後日でさ…終わりじゃん」
「……あぁ」
「………察した?」
窺うとシルバーは、オレの顔に自分の顔を近づけた。
真っ直ぐな銀色の目に、情けない顔のオレが映る。
「鍵さえくれれば、いつでも会いに行く」
「何で鍵!?」
「会いに行っていなかったら嫌じゃないですか。それとも部屋の前で待てと?」
「…ちょっと待って。シンキングタイムプリーズ!!」
「明後日までなら待ってあげます」
何で上からだよ、と上目遣いで睨む。
不意にシルバーが真顔になって、言った。
「毎日会わなくても、ずっと好きでいる」
…欲しい言葉をいつも欲しい時にくれるのがずるい。
「なんか、オレ子供だよな…」
「別に先生を大人だと思った事ありませんけど?」
「えっひど!!」
「そういう意味じゃなくて。ゴールドが好きだから」
「…シルバーって結構、恥ずかしいよな」
「顔真っ赤ですけど?」
「っ大人をからかうんじゃありません!」
叫ぶと、シルバーはくすりと笑って、優しくオレの唇に口付けた。
なんだかんだで部屋の合鍵を渡しちゃったことは、先輩には絶対、言えない。
先生(のタマゴ)なゴールドと生徒なシルバーです。年下攻めって良いですよね!←恋愛に引き気味なゴールドが好きです←
続編かけたらかきたいなぁ…。