ポケスペ

□行かないで2
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「ったっだいまー」


と、言ってもオレん家じゃないけれど。

本来の家の主は、いるかと思いきやいないっぽい。
がらんとした部屋の素のままの温度がそれを切に伝えて来る。


「つまんねーの・・・」


今日は久しぶりに家から帰ってこいと連絡が来て、その所為で朝から家に帰ってた。
何事かと思えば帽子を忘れてったから取りに来い、というオチで脱力した。
それから気晴らしに、育て屋によってポケモンと遊んだりばあさんと世間話をしたりしてから帰宅したのだ。


「っちぇ・・・」


いつもの定位置、ソファに寝そべる。

妙にそわそわして気分が落ち着かないものだから、オレはポケギアをいじる事にした。
でも、ラジオは変なのしかやってない。つまんねーの。
シルバーに電話でもしてやろうかと思ったけど、オレばっかアイツの事気にしてるみたいで嫌だ。
だから、クリスに電話をかける事にした。

捕獲中だったらでねーだろうな、アイツ。
出なかったら、嫌だなぁ…。


「もしもし、ゴールド?」

「よっ!」

「早速電話してきたわねー」

「へ?なにが?」

「寂しくなったんでしょ?そんなんでこれから大丈夫なのー?」

「は?何言ってんだよ?なんの話?」

「え?聞いて無いの?」

「だから何を!」


「シルバー、カントーに行くって」






「・・・は?、」


血が、血が流れる音が聞こえる。


「もしもーし?どうしたの?」

「…え…それって、……嘘?」


今度は、クリスが黙る番だった。


「・・・聞いて無いの?」

「・・・な、にも」


答えた声は虫の羽音よりも小さい。
その事に動揺する。何を動揺してんだよ、オレ。


話したばかりだった。
カントーに行くかもしれない、と。

わがままだと思ったけど、言わずにはいられなくて、泣きながら「行かないで」と言った。
その時は、行かない、と言っていた。

だけど、


「ゴールド?聞いてる?」

「……どっち?」

「え?何が?」

「リニアと船どっち!?」

「ふ、船だと思う、けど…」

「分かった、サンキュ!」

「あっ、待って!ゴールド!!」


ぷつ、とポケギアを切る。


置いたばかりのリュックから相棒たちを取り出して、オレは玄関へと走った。
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