ポケスペ

□酒
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「未成年はお酒飲んじゃ駄目なんですよ!?」

いつだったか、前に図鑑所有者で集まった時の話だ。
誰かが酒を持ち出し、飲もうという話になった時の。

一人前述の台詞を繰り返し叫んで、飲酒を頑なに拒んでいたのがクリスだ。
最終的に姉さんがクリスのコップに酒を混入させて飲ませたが。
クリスもイエロー先輩もグリーン先輩も、結構序盤で潰れていたように思う。
自分の事は覚えていないけど話で聞くと、残ったのは姉さんとゴールドとレッド先輩だったそうだ。
姉さん曰く、ゴールドは「ザル」らしい。ちなみに、姉さんとレッド先輩はそれを通り越して「ワク」なんだそうだ。

とにかく、オレが何を言いたいかと言えば。

何で「ザル」のお前がこんなに酔ってるんだ、という事に尽きる。





「ん、おいし」


姉さんから貰ってきたとかいうワインを開けたのは、その日の夕食が終ってからの事だった。
未成年に堂々とワインをあげる姉さんも姉さんだが、それを堂々と飲むゴールドもゴールドだ。
勧められたが前飲んだ時を思い出すと気が引けて断った。


「未成年が酒の美味い不味いが分かっていいのか?」

「うまいもんはうめーんだよ」


ゴールドはきっぱり言い放ち(言い放つ所ではないが)、二杯目を注ぎ始める。
止める気にもなれずぼんやりと、満たされた赤い液体が消化されてるのを見つめる。

こん、とグラスを置いたゴールドの頬が、心なしか赤いような気がした。


「酔ったのか?」

「2杯くらいでよーわけねーじゃん」


既に呂律が怪しいような気がして、オレは無言でグラスを取り上げる。


「あ、なにすんだよ」

「これ以上飲むな」

「うぅ、意地悪ー!」


いいもん、といってゴールドが瓶に手を伸ばす。
あ、と思えば、時すでに遅し。

赤い液体がみるみる飲み込まれいく。


「馬鹿!何してんだ!」

「ふふーん。飲んじゃったもんねー」


頬の赤みは気のせいじゃないと確信できるほどに深くなっていた。
とろんとした金色の目が酔っていることを証明している。

いや、これは、ちょっと。

一瞬よぎった感情は、見ないふり。
とりあえず瓶を取り上げて、手の届かない所に移動させる。


「ああぁーーっ!」

「一気に飲む馬鹿がどこにいる!中毒になるだろうが」

「シルバーの意地悪ー!」


どうせ。
続けたゴールドの声に、背筋に冷たい汗が流れる。
何故って、その声は、今にも泣き出しそうで。

止めようとすれば、声は何故が大きく鋭くなってしまい。


「何でそこで泣く!?」

「うっせえ!泣いてねーよばかぁ!!」


言った傍から、金色の目に涙がジワリと滲む。
ぎょっとしているこちらを気にもせず、ゴールドが叫ぶ。


「どうせ、どうせシルバーなんてオレの事嫌いなんだろ!?」

「…は?」


突然話が飛んで、頭がついていかない。
しゃくり上げながら、ゴールドが言う。


「だって、だって最近、手もつながないしちゅうもしてくんないし抱きしめてもくれないしっ・・・!!」


もう分かってるもん、と言いながら、ぼろぼろと手放しでゴールドが泣く。
金色の目から大粒の涙が、頬をつたっては床に落ちる。


なに、これ。

居た堪れなくなって、机に突っ伏する。

あぁ、くそ。

こんな所で可愛くなるのは反則だろう。


泣きっぱなしの顔を窺うように覗き見ながら、訊く。
恐くて聞いて良かったのか分からなくて今まで聞けなかったけど、今なら良いだろうか。


「それって、して欲しかったってとっていいのか?」

「んえ?」


きょとんとしたゴールドの体を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめる。
久しぶりに抱きしめる体は、前と変わらず華奢だった。
体が熱いのは酔ってるせいか。子供みたいな熱さだ。

腕の中の強張った体の力が、不意に抜けて。


「・・・シルバー」

「なんだ」

「あったかい」

「・・・そうか」


ことんと音がしたと思えばゴールドの手が、だらんと床に垂れてぶつかった音だった。
金色の目はもう閉じていて。どうやら寝てしまったらしい。

こんな無防備な姿見せつけられて、手を出さないオレもオレか。

自嘲気味に笑いながら、これ位なら許されるかなとゴールドの額に優しく口付けた。
ゴールドの唇がわずかに動いたのは、見なかった事にする。

起きたら手を出すか等と下らない事を半ば本気で考えている間に、夜はどんどん深くなっていった。




〜おまけ〜


「もしもしー?」

「・・・姉さん」

「その様子だとあんたは飲まなかったのね。ゴールドはどう?」

「今は寝てるよ」

「ふふふ、どうだった?」

「どうって?」

「ワインよ。まぁワインじゃないんだけど」

「・・・だとは思ったけど。アレなに?」

「自白剤。の改良品」

「・・・」

「あ、無害だから安心してねー。で?何言ってた?浮気してたとか!?」

「姉さん、ちょっとシャレにならないよそれは・・・」

「可能性はあるじゃないのよ。で、どうなのよ?」

「・・・教えない」

「あら、意地悪」

「で、アレって効果いつ頃まで?」

「ひ・み・つ。明日面白い事になってる、とだけ言っておくわ」

「何でそんな面白い基準なの」

「あーら、面白い方が良いに決まってるじゃないの人生!」

「…。本当の所は?」

「………」

「姉さん」

「ただいま留守にしております。後ほどかけ直し下さい」


ぶつっ







次の日、ゴールドが「オンナノコ」になっていたのは、また別の話。




ゴーは酒強いと思います、個人的に。シルバーは酒乱の気があればいいと思う!←
毎度の事ながら甘甘ですサーセン。なぜかシルバーさんがへたれになった。。。けどこれはこれでいいのでしょうか…?

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