頂捧他

□かげろー様へ
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「ねぇねぇ、シルバーくん」
(………げ、)

可愛らしい声でいきなり話しかけられて、ものすごく慌てる。この手のタイプは本当に苦手なのだ。
こうやって休み時間に女子達に話しかけられる機会はそう少ない訳でもなく、そのような時の対処は全てゴールドにまかせているのだが。
先程までいたゴールドは先生に呼ばれたとかで、クリスに連行されていった。
…本当に、大事な時にいない。

「………何」

尖らない様に気をつけて声を発したはずなのに、ものすごく不機嫌そうな声が出た。
が、そんな事には気を止めず、女子達は超音波としか思えない声を発する。

「なんかー。友達が友達から聞ーたんだけどねー」

何故ゴールドはこいつらと会話することが出来るのだろうか。それも楽しそうに。いや、実際楽しんでいるのだが。
オレだったら三分でもうギブアップだ。というかまだ一分も経っていないが、ホールドアップしてもいいですか。

「ウワサなんだけどー。あくまでウワサなんだよー?」

前置きは分かったから、さっさと話せ!
うんざりしてきた所で、その女子達はあっさりと爆弾投下した。


「シルバーくんってさー、」
「他校に彼女がいるってホント?」






「………………………………は?」


たっぷり一分程は、フリーズしてたいただろう。
女子たちはその反応が面白かった様で、キャーッとか何とか言って盛り上がっている。
…つまり、状況を把握できてないのはオレだけで。

「……え、…は、……何、それ」

彼女は同じ学校、というかお前達もよく知ってるであろう同じクラスの爆発前髪なんだが。と、頭の中だけで必死に弁明してみる。
口に出したかったが、そんな事をすれば殴られる事は必至だったので黙っておいた。クリスや姉さんに言うのでさえ、アイツは嫌がっていたし。

そんな事情で口をついて出たのは意味の分からない音の羅列で。
それでもオレが困惑している事は多いに伝わった様で、女子達はやっと細かい事情を説明してくれた。

「だからー、友達が見たとか言っててー。他校の女の子と二人きりのとこー。ねー?」
「そーそー。すごい雰囲気良かったとか言ってたからー、彼女かなー?みたいなー」

「……………は?」

そもそも最近女子と二人きりだった記憶が無いんですが、と口を開こうとした所で。
教室の後ろのドアが、ばぁんっと開いた。


「この、」
「ゴールド!?」

「こんの、浮気者おぉおおぉぉおっっ!!」

ゴールドは勢いよくドアを開けたその勢いのまま、こちらに突進してきた。

「ちょ、落ち着け、」
「誰が餅ついてられるかこの浮気者ーっ!!ってめ、オレという者がありながら!」
「おま、人の話を、」
「モテるからって二股かけてんじゃねーよこのくそばかシルバアアァアァァア!!」
「っ、ゴールド!!」

怒鳴るとゴールドの体がびくっとはねた。
そのまま硬直したので、そっと顔を伺う。
落ち着いた、か…?


「…ぅ」
「!!?」

やばいやばい、これはやばい。
頭の中の警報機が鳴り響くが、時既に遅し。


「っうわあぁぁあぁぁああぁぁあんん!」


小学生の如くびーびーと、ゴールドは泣きだした。
溜息交じりにオレは言う。



「………人の話を聞いて下さい…」





***





「…この、浮気者ぉっ………ぅ、ぐすっ…」

わんわん泣きながら脱兎の如く逃げ出そうとしたゴールドをなんとか捕獲し、かといって教室に置いておく訳にもいかないので、屋上に来ていた。
ゴールドは先程に比べれば落ち着いたものの、抱きしめて宥めてやってもなかなか泣き止まない。

と、閉めていた屋上のドアがばぁんっと開いた。

「ゴールド、シルバー!やっぱりここに居たのね」
「クリス!」
「シルバーの浮気相手の情報集めてきたわよ!」
「誤解を招く言い方をするな!!」
「え?違うの?」

シルバー器用だからつい魔が差したのかとばかり、付け加えられた言葉はかなり心外だ。
ゴールド以外に恋仲になりたいと思う奴なんていない!…とは、本人を前にしては口が裂けても言えないが。

「…で、何が分かったんだ」
「え?でも、浮気ってガセネタなんでしょ?」
「コイツは信じてないからな、ガセネタだって。だから説明してやらないと、」
「…だって、ギャルと二人っきりでいたのは事実じゃん。見られてるんだろ」
「だから、最近女子と二人っきりになんかなって無」
「あー、そういうことね。だったら、ほら。話すから聞きなさい、二人とも」

無限ループの小競り合いを、クリスは見事に切って捨てた。さすがクリス。


「じゃ、まず、目撃情報によると…、日時は、一昨日の昼休憩のときね」

一昨日?
その日は何かあった気がしてゴールドの方を思わず伺うと、向こうもそうだったらしく目があった。

「場所は、図書室の方の廊下」

……………。

「で、当の女の子なんだけど、服は他校の制服。髪は黒髪で肩くらい」

……あー…。

「それと、あ、そうそう、目が金色だったって」

決定的である。



「………あの、」
「?どうしたのゴールド?」


「………あの、それ、………オレ、です」


「ええぇっ!!!?」

吃驚しているクリス、そうか、クリスは気づかなかったのか。
一昨日の昼休憩、姉さんとルビーによって女装させられたゴールドは、最初に見た時はオレでさえ気づかないほどに『女の子』になっていた。

そう、遠目から見た事情の知らない女子を勘違いさせるのに十分な程度には。
それに、仮にも恋人同士なので「良い雰囲気だった」という噂の発信源の女子の見立ては間違いではない。

「えーっと、じゃ、つまるところ、」

クリスは遠慮がちに口を開いた。



「シルバーの浮気相手は、ゴールドだったってこと?」


運命的な浮気にも負けない

(?どうした、ゴールド)
(いや…。その…、…浮気者とか言って、ごめん)
(あぁ…。別に気にしてない)
(ほんと…?)
(本当。ゴールドがオレの事が大好きだっていう事がよく分かったから、それで十分だ)
(っ!!?)









あとがき

Heat Waves』のかげろー様に捧げます!
増長にもほどがあるし、狼得にもほどがあるんですけど、かいてて楽しかったです…。
というか、我ながら噂の発信源の女子がうらやましいです。知らなかったとはいえ、女装ゴーを見た…だと…!?←

お優しい言葉を頂いたので、これからも増長する事があろうと思いますが←、よろしくお願い致します!!
苦情書き直しは年中無休で受け付けさせていただきます!!

にしても題名が下手くそである!!


お持ち帰りはご本人様に限りどうぞ!

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