頂捧他
□那緒様へ
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ひ ま。
最近のオレはもはやこの二文字でしか無い様な気がする。
それくらいに「ひま」なのだ!
そもそも!
吸血鬼であるあいつは夜行性な訳で、人間であるオレと活動時間が噛み合う事は極めて少ない。
一日で時間が合うのは、朝早くと夜遅くの数時間だけ。
せっかく、その、なんだ、好きな人が近くに居るのにこの仕打ちは無いだろう。
っていうか、おかしい!そう、おかしい!
という「イイワケ」をふまえて。
今オレはシルバーの部屋に居る。
***
部屋は暗い。
正午だというのに何でこんな暗いんだ、と思えば窓には分厚いカーテンが引かれていた。
よく話で聞くような棺桶の中に寝ているのだろうと想像していたけれど、それは全く違って。
古めかしいベッドの上にある塊。あれがシルバーだろう。
推測なのは目が暗さに慣れていないからだ。視界が利かないので仕方が無く、ドアは全開で開け放しておいた。
足音を忍ばせてベッドによれば、規則正しい寝息が聞こえた。
うっすらに見える赤い髪と白い頬。あぁ、意外に睫毛が長い。
認めたくないが、見惚れているうちに、足が何かに引っかかって。
どこぞの本さながらに、オレは重力に従ってベッドに倒れ込んだ。
「・・・ん、」
「っっ!!?」
やばい、やばい、これはやばい。
これは駄目だアウトな方です!!
慌てて逃げようとしたところで、がっし、腕を捕まえられた。
ぐっとひき寄せられれば、目の前にあるシルバーの顔。
・・・何で暗いの慣れてんだよオレの目!
「…オレに夜這いをかけるとはいい度胸だな」
「っ!?…ち、ちがっ…!!」
「それなりに覚悟はあるんだな?」
「はあっ!?ちょっ、」
シルバーはオレの言葉など全く聞こえないかのように、
腕を掴んでオレを引き寄せるとがぶ、首に噛みついた。
***
ぱ、口の中に広がる血の味。
流れ落ちる時間を待つ事さえ惜しく、オレはそのまま首に吸いつき血管から直に血を啜る。
ぐ、と背中に回ったゴールドの腕に力が入る。「限界」の合図だ。
押し殺している荒く浅い息が、切羽詰まったことを切に表している。
飲み足りないと叫ぶ体を何とかゴールドの首から引き剥がす。
食欲に関して、体はこんなにも言う事を聞かぬなるものなのかと、半ば感心してしまう。
「ってめ、なに、してん、だよっ…!」
ゴールドは顔を耳まで赤く染め、涙目でこちらを睨みつける。
涙目なのであんまり怖くはないが。
「食べたかったから」
「昨日も食っただろうが!」
自覚は無いが自分はかなり寝起きらしい。頭が上手く働かない。
「・・・そういえば、そうだった、かもしれない」
「…そうだったのっ!」
意味分かんねー、バカ、とゴールドはぶちぶち呟きながらオレの体にもたれ掛かる。
少量とはいえ、直に吸ったのは良くなかったらしい。
未だにゴールドは浅く荒い呼吸のままで苦しそうだ。
仕掛けて来たのは向こうとはいえ、さすがに罪悪感に苛まされる。
「…次からは、気をつける」
「・・・・・・絶対だかんな」
ぷい、そっぽを向いた素振りが、犯罪的に可愛らしくて。
「・・・・・・・・・食べたい」
「は?…今食べたじゃん?」
「違う」
ゴールドの体を引き寄せて、その唇に口付ける。
「っっなあぁっ!!!?」
先程とは違う意味で耳まで赤く染めた顔に、
今度こそ体は言う事をききそうに無かった。
那緒様からのリクで、銀金の吸血鬼パロの番外編です。
あとがき(のようなもの)↓
相互記念で暗転フラグとか私自重すぎる…。
そして場面転換が下手すぎる。さらに長すぎる。。。
書き直し・苦情どしどし受け付けます!!
お持ち帰りは、本人様のみでお願いいたします。