連載
□人は食べてすぐには分からない
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「御馳走様でした!」
朝食を食べ終え、ゴールドはきちんと手をそろえてそう言った。
吸血鬼にそのような文化は無いのでなかなか面白い。
「吸血鬼ってこーゆーもん食べんの?」
扉に寄りかかっていたオレを振り返りゴールドが訊く。
「食べないな」
原理はよく分からないが吸血鬼の体は人の血だけで生きているようになっており、それゆえ人の血以外は受け付けられないようになっている。
見た目は似ているので自分も人のように食事できるのかとも思ってしまうが。
小さく欠伸が漏れた。
「・・・眠い」
「寝ればいーだろーが。…そういや吸血鬼って夜行性なんだよな」
人はしばらく交流しない間に、本当にたくさんの単語を使うようになった。
「ヤコーセー?・・・夜動くってことか?」
言ってから気がついて確認する。
「んー、まぁそんな感じ。思ってたんだけどさー夜動いて得あんの?」
「得っていうか…、太陽が嫌い」
遠くにあるくせに大きく見えて、ぎらぎら光って熱いし眩しい。
吸血鬼も人と同じく太陽の光が生きるのに必要らしいが、その量は微量である。
今度は大きく欠伸が漏れた。
「眠い・・・」
「だから寝ればいーだろーが」
「・・・そうする」
さっさと寝室に向かおうとして、思い出して振り返る。
「『中』では自由にしていていい」
言うとゴールドが明らかに不機嫌な顔になった。
「『外』出ちゃダメなのかよ?」
「…止めはしないが確実に狩られるな」
特にお前みたいな子供はな、と付け加える。
いつのまにか、ここに吸血鬼がいると噂がたってしまい、人は思い出したように時折ここに『狩り』をしにくる。
所詮、人なので狩られるようなことは無いが。
眠気が本格的に襲ってきたので、部屋を出て扉を閉めてから寝室へと向かった。