連載
□淡い希望は持たないようにしましょう
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目を開ける。
ぼんやりと、薄い白い布が何枚も重なったような視界。
目を閉じて、また開ける。
そこには、見慣れてしまった石造りの天井。
首を動かす。ひどく体が重い。
ベッドの横の机に灯の点ったランプが置いてある。
ランプの灯が届かない部屋の隅は真っ暗だ。もう夜なのかもしれない。
いつもなら、ベッドに腰掛けていたり、壁に寄りかかっていたりするはずのシルバーがどこにもいない。
慌てて体を起こそうとすると、ずきっと痛みがはしった。
そうっと痛みのする場所へ手を伸ばす。
乾いた布の感触。
でも、痛んでいるのはここでは無い。
指をゆっくり進める。
生温かい液体の感触。
そこが一番痛む。
恐る恐る手を抜いて指先を見ると、赤黒く固まり始めた血が付いていた。
ふぅ、と詰めた息を吐き出す。
ゆっくり、ゆっくり、慎重に体を起こす。
上体を起こしてあたりを見てもシルバーはいなかった。
寂しいような安心したような気分で、オレは誰もいない部屋を見つめた。