連載
□人は規則を守らない
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連れ帰った少年を部屋の床に直接転がす。
少年、という人はかなり面倒くさい。
見た目は自分のそれと似ているが、頭の中身はかなり違う。
どちらが優れてるとか劣っているかとかではなく。
食べる時に一番うるさい種類で、時には力を使う。なまじ体つきが似ているせいでうまくさばけないのも悩みの種だ。
ちなみにいっておくと、成人男性は食べない。体系的に連れ帰れないから。
とにかく、オレは少年をその場の空腹に負けて連れ帰った事を早くも後悔していた。
命乞いの声ほど耳を塞ぎたくなるような音は無い。それを聞くのかと考えるだけで気が重い。
唯一の対抗策としては、目を覚まさないうちに食べる事だが、噛む時に起きるので変わらないといえば変わらない。
悩んでいると、少年の指がピクリと動いた。
しまった起きたか。
今更ながらさっさと食べなかったことを悔やむ。今日は後悔してばかりだ。
距離をとるため、ちょうど少年からは後ろにあたる壁に寄りかかる。
程無く少年がむくりと起き上がる。
わざと音をたてると、少年ははじかれたように振り向いた。
その目は、真っ直ぐな金色だった。
一瞬息をのんで、慌てる。何を慌ててるんだ自分は。
が少年はそんなこちらに気づかない。当たり前か。
なんたって、目の前にいるのは人々が恐れ憎む、
「吸血鬼」なのだから。