ポケスペ

□好きは汚い
1ページ/1ページ


最初は、姉さんだけだった。
世界には姉さんしかいなくて、それが当たり前だった。

でも、今は違う。

幸せになって欲しい、と願う人が増えて。
自分じゃ何もできないけど。でも、幸せを願う人が出来て。

姉さんに変わったわね、なんて言われて。
姉さんがあの人たちに会って明るく変わったように、オレも変わったのかもしれない。
そう思うと、どこかくすぐったくて心地よくて。

その中で、お前だけは違った。

確かに、他の人と同じで、大切で幸せを願うのに。
抱く感情が何か違った。

荒い、とでも言えば良いのか。

粉々に壊してしまいたくもなるし、近寄って欲しくないとも思うし、逆に触れたくなる時もある。
初めての感情をも持て余している時、ふと思った。

これが「好き」なのかと。

「欲しい」のだ。全部、ぜんぶ、ゼンブ。
髪も目も耳も口も腕も指も足も何もかも。
自分だけのものにして他の奴らには見せない、触らせない。
そう出来ればどんなにいいだろうか。




「だから、「汚い」ってか?」


長い話だった。
いつもはうるさく喚いているのに、ゴールドは黙ってオレの話を聞いていた。


「だって、そうだろう」

「なんでだって何だよ」


「欲しい」と「好き」は同一語で、「欲しい」というのはただの「欲」だ。
人の「欲」ほど汚いものはない、と思うから、「好き」も汚いのではないか。

単純で分かりやすいと思ったのに。


「違うだろ」

「どこが?」

「…言えないけど!でもさ、なんかさ、違うじゃん…?」

「訊くな」

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ