COW

□手当
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「顔は・・殴られたところが腫れてるだけだな・・
じっとしてな」

「・・・・・ッ」

「・・痛かったか?」

「あ・・だいじょぶ・・です・・・・・」

「・・・・・・・」





どうやら怪我をした自分の頬に湿布を貼ってくれるらしい丑嶋に少し恥ずかしさを感じながらも女はじっとしていた

湿布を貼るときに少しだけ痛みが走ったが丑嶋の言葉に大丈夫だと小さく返す

どう見ても大丈夫そうには見えなかったが本人がそう言うのなら別に構わないと牛島はすぐに視線を少し落とした






「とりあえずそのパーカー脱げ」

「・・・・え?」

「腕とかも怪我してるかもしれないからな・・
消毒くらいはしとかねぇと」

「あ・・はい・・」





そう言いながら今度は消毒液とコットンを手に持っている丑嶋に女は少し慌てた様子で丑嶋から借りたパーカーを脱いだ

あの男のせいできちんと肌を隠してくれない洋服の前がはだけないように気を付けながら脱ぎ終わるとそれを膝の上に遠慮がちに置く

丑嶋は無言で女の腕を取り怪我をしている場所はないかと視線を送りときおり力を込めて唄がらないかを確認した

ざっとみたところ腕や足に多少のかすり傷はあるものの大きな怪我はない

血がにじんでいる個所を消毒し絆創膏を貼り終え最後に全体を見回して他に問題がないかを確認すると丑嶋は手に持っていたものを再び袋に戻し始める






「大丈夫そうか?」

「え・・はい・・・・大丈夫です
あ・・りがとうございました」

「おう」





顔を上げずに道具を仕舞いながらそう尋ねてくる丑嶋に少しだけ声を上ずらせた女が返事を返す

チラリと自分の腕を見やればいくつか貼られた絆創膏

その見た目には似合わず意外にも優しく丁寧にほどこされた処置のおかげで頬以外は全く痛みを感じなかった

道具を仕舞い終えた丑嶋は女の膝の上のパーカーを見やりすぐに視線を女にやる





「それ着てていいから」

「・・・・ありがとうございます」






いいのだろうか・・と少し遠慮がちな視線を送ったがさすがにこの格好のままではいられないので女は言われた通り再びそのパーカーに袖を通した

女がパーカーから頭を出すと同時に先ほど入ってきたドアがガチャリと小さな音を立てて開きそこから高田が顔をのぞかせる






「終わりました?」

「おお ちょうど終わったところだ」

「お疲れ様です社長
・・・・・大丈夫ですか?」

「あ・・はい 大丈夫です
いろいろご迷惑をかけてしまって・・すみませんでした」






ふわりと優しげに微笑む高田に緊張がほぐれた女は先ほどよりもはっきりとしたトーンでお礼の言葉を口にした

高田は「気にしないで」と再び微笑む

それを見ていよいよ安堵の表情を浮かべた女だったがしかし安心したせいなのか緊張の糸が切れたようにふ・・ッと体から力が抜けた

カタリと小さく音を立てたイスから倒れそうになる女を見てハッとした丑嶋はパッと手を伸ばしその体を抱き上げる

すぐに女の顔を覗き込んで見るとどうやら気を失ってしまっているらしい

高田はひょいッと同じ様に女の顔を覗き込み困ったように苦笑いを浮かべた






「あんなことがあったんだから仕方ないですよね」

「・・・・・仕方ないとしても・・どうすんだよ」





軽くその体を揺らしてみても目を開く気配すらないその女に丑嶋は大きなため息をついて高田を見上げる

そうすれば相変わらず苦笑いを浮かべている高田が口を開いた






「その人の家も解らないし・・ここに置いておくわけにもいかないから誰かが連れて帰るしかないでしょうね」

「・・・・・・・はぁ」




そう言いながらじっと自分を見つめてくる高田に眉間のしわを深く刻んだ丑嶋

しかし

やはり

自分だろう

できればそんな面倒なことはしたくないのだがしかし先ほど高田が言ったようにそれしか手はなさそうだ

丑嶋は再び大きなため息をつくと女の体をゆっくりと抱き上げる





「俺は先に帰る
こいつをどうするかは明日こいつが起きたら考える」

「わかりました
何かあったら行きますから連絡ください」

「おう」





そう短い会話を交わすと丑嶋はさっさと部屋を後にした

部屋の向こうでは相変わらず一体何なんだと不思議そうな声を上げるマサル

それをめんどくさそうに流しながらさっさと会社を後にした丑嶋に苦笑いを浮かべた高田はゆっくりとした足取りでその部屋を後にした



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