純情夢舞台

□純情ロマンチカ
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「桜井さ―ん!」


「ん?美咲じゃん」


「今帰り?」


「ん。まぁな」



 桜井 水城、19歳。大学1年生。身長170p。何故か知る者は少ないが、性別・女。外見・中性的。一人称・オレ。そんな彼…こほん。彼女に声をかけたのは原作の主人公、高橋 美咲。ちなみに同級生。



「美咲、今日は赤いスポーツカーのお迎えはないのか?」


「……桜井さん、楽しんでるだろ」



 にやにや笑いながら聞いてくる水城にむぅ、と唇を尖らせて言う。



「もう、本当にあれ恥ずかしいんだぞ!」


「ははは、わりぃわりぃ。しっかし妙なもんだよな〜兄貴のダチがあの人気作家の宇佐見秋彦とはなぁ。それに居候先の主だっていうし?世間は広いようで狭いっつーか」


「本当だよ。俺何かあるんじゃないかな」


「何かって、宇佐見専用フェロモン?(笑)」


「うあぁ、嫌だ〜!!」




 美咲をからかうのが水城の楽しみだったりする。



「桜井!」


「んぉ?上條センセどうかした?」


「どうかした?じゃなくてな。おまえ論文進んでるのか?」



「え!?桜井さん論文書いてんの!?」




 上條の言葉に美咲がかなり驚いたように声をあげた。
 まぁオレ1年だしな。



「そんなに意外か?」



 苦笑して聞けば慌てて両手を振る美咲。



「いや、そうじゃないけど。だって桜井さんも1年だしさ」


「まぁ1年で論文書いてる奴は滅多にいないな」


「ははは。…まぁもう後2、3行なんで明日持って来ますよ」


「そうか、早いな」


「まぁ、な♪」




 とりあえず上條と別れて、水城と美咲は今度は角に捕まった。



「もう帰んの―、美咲、水城」


「うぉっ!角先輩重い!!のしかかるなぁ!!」


「ちょっと角先輩!!」


「はは、本当に仲良しだなおまえら」



 角にのしかかられて暴れる水城を美咲が奪還。




「あ―、重かった…」


「悪い悪い。また明日」




 角と別れて再び水城と美咲は校門を出た。
 家に帰りリビングに入った瞬間、水城の目は点になった。




「…なん、じゃ、こりゃ?」




 そこは見事にもぬけの殻となっていた。





「嘘だろ…!?」




 慌てて他の部屋を見に行くが、結果は同じ。
 途方に暮れつつリビングに戻り座りこむ。




「まじかよ…」





 テーブルの上には、置き手紙が残されていた。
 そこには、母親の字で“ごめんなさい。ほとぼりが冷めたら連絡します。母さんより”と書かれている。



「家、解約されてるし…なんだよこの漫画みたいな展開は」



 家なくてどうしろってんだよ。


 深々とため息をついて残されていた自分の荷物を持って家を出た。
 こんな時に思い浮かぶのは、…美咲と、上條くらいのものだった。そんな事を思っていると、なんとも都合よく目の前に買い物帰りの彼がいた。



「…あ、桜井さん。偶然…何その大荷物!?」


「…美咲ぃ〜」


「え、桜井さん!?ど、 どうし…」



 突然泣きそうな表情で抱きついてきた水城に慌てる美咲。



「…うぅ、悪い、美咲…おまえに話すべき事じゃないけど…」


「そんな事ない!桜井さんは友達だし、俺にできる事があったら力になるからなんでも言って!!」


「…美咲」



 水城は感激していた。自分を友達だと言ってくれる美咲がいる限り、自分は大丈夫だ。少なくとも変な気を起こさないだろう。そう思えた。



「…美咲、ありがとう」



「う、ううん////」



 水城の綺麗な笑顔に美咲は思わず頬を染めた。それに気づかない水城は再びため息をついて一通り話した。
 話終えて美咲の表情を見て、水城は慌てた。



「み、美咲?な、泣くなよ…」


「桜井さん!!」


「はいっ!!?」



 美咲がいきなり顔をあげ肩を掴んできたので、水城は思わず叫んだ。



「家、行こう」


「は?う、家?って誰の…」


「ウサギさん家。」


「へ?ちょっ、み、美咲?おちつい…」


「行くよね?」




 今の美咲は目が怖かった。
 ニッコリといつものように笑っているようだが、後ろに黒いオーラが見える。「黙ってついてこい」と目が言っている。
 逆らえば自分が危ない。水城はコクコク頷いた。






 
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